日本は世界第4位のバラエティ番組フォーマット輸出国~カンヌで注目集めたTBSプレゼンツ市場解説セッション~MIPTVカンヌ2024レポート【前編】 / Screens

日本は世界第4位のバラエティ番組フォーマット輸出国であることがフランス・カンヌのTVコンテンツ国際マーケットMIPTV2024で発表された。調査結果はイギリス大手リサーチ会社のK7メディアによるもので、その詳細についてMIPTV期間中、TBS主催のセッションで説明が行われた。日本のバラエティ番組の可能性が世界で再び注目を浴びたその模様を前・後編にわたりレポートする。

■日本のバラエティ番組フォーマット巻き返す

第61回の開催を数えたMIPTVはプレイベントを含む2024年4月6日から10日までの期間、フランス・カンヌ市内にあるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレを会場に開催され、注目トピックの1つに日本のバラエティ番組フォーマットの再躍進があった。これまでも2012年から始められたカンヌ現地での官民一体のセールスプロジェクト「トレジャー・ボックス・ジャパン(TBJ)」などの展開を通じ、日本のバラエティ番組フォーマットは世界の番組バイヤーやプロデューサーから「日本のバラエティ番組はクリエイティブ力があってユニーク」といった内容の評価を得ていた。

一方で、2019年以降、カラオケ勝ち抜きバトル『THE MASKED SINGER(ザ・マスクド・シンガー)』をはじめとする韓国発バラエティ番組フォーマットの世界的な成功の影響もあり、日本のバラエティ番組フォーマットの注目度は相対的に下がっていたと言わざるを得ない。そんななか、今回のMIPTV2024において幅広い場面で日本のバラエティ番組が話題に上り、巻き返しを印象づけた。

フォーマットビジネス専門イベントMIPFORMATS初日の4月6日、バラエティ番組フォーマットのグローバル市場分析セッションでは、Amazonのプライム・ビデオ発『ドキュメンタル』(吉本興業)が2023年の「ストリーマー・フォーマット・スター」として紹介された。イギリスのリサーチ会社K7メディアの調査により、2023年に集計した世界の351番組タイトルの中で配信フォーマットとしては世界ナンバーワンの成功実績という。登壇した上席アナリストMichelle Lin氏は「『ドキュメンタル』はローカル版がこれまでイタリア、フランス、ドイツなどに広がり、2023年は8つのバージョンが新たにローンチした。成功している番組フォーマットの1つにある」と説明した。

また4月7日に開催されたMIPFORMATSの人気コンペティションセッション「MIPFORMATS Pitch」(ドイツZDFスタジオ協力)では、フォーマットアイデアのピッチ優勝企画に密室コメディゲームショー『The Stupid House』(イギリス)が選ばれた。まさに『ドキュメンタル』からヒントを得たような内容で、企画者のChulapo Pictures 開発プロデューサーSergio Lopez氏自身も「日本のバラエティ番組がもともと好きで、インスパイアされて開発した」と語っていた。

■世界75か国と地域に展開された成功実績

日本の番組フォーマットの再躍進を効果的に印象づけたのは、TBSがMIPTV初日の4月8日に主催した「NAVIGATING JAPAN: INSIGHTS, CO-PRODUCTIONS, AND NEW FORMAT FROM TBS」だった。イギリスのリサーチ会社K7メディアの協力により日本全体の番組フォーマット分析発表が行われ、さらにTBSと共同制作したイギリス最大手のコンテンツ制作配給会社All3Media Internationalの協力により今回のセッションが実現された。

K7メディアは先のMIPFORMATSにおけるバラエティ番組フォーマットのグローバル市場分析セッションで2023年の集計により「日本は世界第4位のバラエティ番組フォーマット輸出国」であることも発表し、TBSセッションではそれを深掘りする内容となった。なお、2023年世界全体の番組フォーマット輸出量に対して、トップのイギリスは25%、アメリカは24%、オランダは15%を占め、この3大フォーマット大国に次いで日本はフランスと同率5%のシェアで世界第4位に位置する。韓国は4%のシェアで第6位だった。

改めて日本の番組フォーマット実績を振り返る好タイミングとなり、TBS主催のセッション会場に多くのMIPTV参加者が詰めかけた。K7メディアはTBSの『SASUKE』や『わくわく動物ランド』など番組フォーマット世界ヒット事例に留まらず、日本テレビ『¥マネーの虎』、フジテレビ「脳カベ」(『とんねるずのみなさんのおかげでした』コーナー)、テレビ朝日『格付けしあう女たち』なども挙げ、これまで日本の番組フォーマットは世界の75か国と地域に展開されたことが報告された。

■アジアでNo.1のバラエティ国際共同制作国

なぜ日本の番組フォーマットが世界で受け入れられているのか。その理由は興味深い。K7メディアのAPAC、中東、アフリカ地域マネージャーのTrang Nguyen氏は「これまで輸出された日本の番組フォーマットの80%近くがコミカルなゲームコンセプトとカラフルなビジュアルの組み合わせのもの。この2つの要素が世界的な成功の重要な原動力となっている。加えて、日本の地上波で大量にバラエティ番組が放送されていることも大きい」と分析する。

またNguyen氏は「日本のゲームショーフォーマットは今後も日本の主要な輸出ジャンルであり続けることを予想する」と述べる一方で、ローカル色の強さを挙げ、「実績のあるコンセプトをより良いものにするための再パッケージ化や、国や文化を越えるような新しい要素を取り入れることが不可欠だ」と指摘する。

この問題解決の1つの方法に国際パートナーとの共同制作があるという。実際に国際共同開発に取り組む日本の事例は増え、K7メディアの調査によれば、過去5年間、世界市場に導入されたアジアと欧米による共同制作バラエティ番組フォーマットの半分以上は日本が携わるものであることがわかった。つまり、アジアの中で日本が最も多く、欧米とのバラエティ番組フォーマットの国際共同制作を進めているのだ。

具体例に日本テレビとイギリスBBCスタジオによる『バレたら終わりの極秘ミッションバラエティー KOSOKOSO』やテレビ朝日とアメリカのYoungest Mediaによる「セレブリティ・ファイトクラブ』(『ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー』)、そしてTBSとイギリスAll3Media Internationalの新作フォーマット『Lovers or Liars?』を挙げ、K7メディアによる分析パートが締めくくられた。

TBS提供

TBSとAll3Media はどのように共同制作を進めていったのか。会場参加者の興味を惹かせるかたちで、All3Media International のNick Smith氏とTBSフォーマット開発チーフの深谷俊介氏(グローバルビジネス局)が登壇したトークセッションが始まった。後編へと続く。

All3Media International のNick Smith氏(右)とTBSフォーマット開発チーフの深谷俊介氏

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