岸田首相「核なき世界へ、核保有国への働きかけを続ける」G7広島サミットから1年の展望を語る

被爆地ヒロシマに核保有国3カ国を含むG7首脳らが集結したサミットから1年。ガザやウクライナなど世界情勢は厳しさを増す中、サミットを主導した岸田首相に改めて「核なき世界」への展望をテレビ新広島の胡子記者が聞いた。

核保有国を同じテーブルにつかせることが重要

テレビ新広島 胡子美佳記者:
G7広島サミットから1年。ウクライナ侵攻は長期化し、ロシアが新たな核実験の準備を進めるなど、核兵器を取り巻く環境は厳しさを増していて、政府としてどう対応する考えか

岸田文雄首相:
今、核をめぐる状況、国際的な安全保障環境、厳しいものがあります。そして、厳しさを増している。しかし、だからこそ、改めて「核兵器のない世界」という大きな理想に向けて思いを確認していく、こういった努力は大事だと思います

岸田首相はサミット後の成果として、以下2つの条約への取り組みを上げた。

1つ目は、CTBT=包括的核実験禁止条約の発効促進会議で日本として、条約の前進に向けた国際社会の協力を呼びかけたこと。

2つ目は、核兵器の原料となる核物質の生産を禁止する条約=FMCTについて核保有国のアメリカなども参加する形で賛同国のグループを立ち上げたこと。

岸田首相:
核兵器国も同じテーブルにつかせる。こうした努力を日本は率先して続けてきました。こういった努力が、ますます重要になっていると思っています

4月の日米首脳会談では、G7広島サミットで出された核軍縮に特化した文書「広島ビジョン」を含めて、現実的かつ、実践的な取り組みの進展をアメリカと確認した。

岸田首相:
アメリカのみならず、核兵器を持っている国こそ、変わらなければならないわけですから、核兵器を持っている国に、しっかりと働きかけて、現実を変えていく取り組みを唯一の戦争被爆国として日本は果たしていきたい

しかし、核軍縮への取り組みについては評価のポイントを下げる報告も出ている。広島県主導の官民組織「へいわ創造機構ひろしま」が毎年、各国の取り組みを評価する「ひろしまレポート」で、日本は2023年、核軍縮分野の評価が3年ぶりに下がった。

サミットで採択した「広島ビジョン」は評価されたものの、国連総会で核軍縮決議の採択を棄権するなど「核兵器を含むアメリカの拡大抑止への依存を高めている」として、評点率が2022年より1ポイント下落した。

映画「オッペンハイマー」 被爆の実相への関心の高まりに繋がるのでは

アカデミー賞で7部門を制した映画「オッペンハイマー」を見たかどうかについても聞いてみた。

岸田首相:
私はまだ残念ながら映画を見ておりません。しかしながら、原爆の開発に関わった科学者に焦点を当てて、アメリカで映画が製作された。被爆の実相、被爆の恐ろしさ、これを伝える映画であると評価されるとしたならば、これは被爆の実相に対する関心の高まりにつながる。これは意義あるものではないかと思っています

胡子記者:
広島では2025年に被爆80年の節目を迎えるが、改めて首相の核兵器廃絶に向けた決意を伺いたい。

岸田首相:
一昨年、私は国連総会の場で「広島アクションプラン」を提唱しました。1つは核兵器の不使用の歴史、これは続けていかなければなりません。

2つ目として核兵器国が変わらなければならない。つまり、核兵器の透明性を高めること。3つ目としては核兵器の数を減らすこと。

これらのすべての取り組みの原点として被爆地を訪れてもらって、核の実相に触れてもらう。この「広島アクションプラン」を現実的に動かしていくことが今、強く求められている

今回のインタビューで岸田首相は、厳しい世界情勢の中で、「核なき世界」への取り組みとして、唯一の戦争被爆国として、アメリカなど核保有国への地道な働きかけを再度強調する形となった。

サミット1年後の米の臨界前核実験に被爆者らが抗議

その一方で、アメリカは核爆発を伴わない臨界前核実験を14日に行ったと発表。

これを受け、原爆資料館では19日、最後の核実験からの日数を示す「平和監視時計」が2年ぶりにリセットされ「5日」となった。

アメリカのバイデン大統領はちょうど1年前の5月19日、原爆資料館を訪れ、芳名録に平和へのメッセージを残していただけに、被爆者らからは抗議の声があがった。

広島県被団協・箕牧智之理事長:
もうちょうど1年前にあったことが真反対のような状態で、怒り狂うような気持ちで座り込みに参加した。サミットは、セレモニーに終わったのかな。今になって、しらけますよね

広島県被団協や連合広島など11団体でつくる「核兵器廃絶広島平和連絡会議」は20日、原爆慰霊碑前で座り込みを行って強い抗議の意思を示した。この核実験に対し、アメリカ政府だけでなく、初めて岸田首相宛にも抗議文を送る方針とのこと。

(テレビ新広島)

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