無情の豪雨、再建遠のく

南阿蘇村長野地区

熊本地震で多くの家屋が全半壊した南阿蘇村の長野地区は、6月21日未明に山王谷(さんのうだに)川(がわ)で発生した土石流に襲われた。川の中や周辺には大きな岩が積み重なり、被害の大きさを物語っている=2日午後2時45分ごろ、南阿蘇村(小野宏明)
熊本地震で半壊した上、土石流に襲われた自宅を見つめる渡邉茂子さん=2日午後2時50分ごろ、南阿蘇村長野

 6月下旬に熊本県内を襲った豪雨は、熊本地震の被災地に追い打ちを掛けた。南阿蘇村西部の長野地区は地震で土砂崩れや家屋の倒壊が相次いだが、豪雨で土石流が発生。住民は再三の被害に、険しい表情を浮かべる。

 晴天の週末となった2日。長野地区には家屋の片付けや農作業のために住民が戻った。

 「地震で家は半壊したけれど、何とか住み続けようと修理していたのに」。渡邉茂子さん(72)は土石流に襲われた自宅をのぞき込み、涙をこらえた。たんすにあった子ども4人の写真は泥まみれ。夫勉さん(78)が家の補修に使っていた道具も、納屋ごと流された。

 土石流が起こったのは集落を流れる山王谷[さんのうだに]川。6月21日未明の豪雨が、地震で上流に堆積した土砂を押し流した。堤防が一部切れ、民家や牛舎をのみ込んだ。現在はがれきが積み上がり、川沿いの道には高さ1メートルほどの岩がいくつも転がる。

 渡邉さん宅は川面から5メートル以上の高さにある。茂子さんは「50年住んでいるけれど、浸水なんかなかった。地震と大雨が重なりさえしなければ…。もう、ここには住まれんね」。豪雨被害の後、仮設住宅への入居を決断したという。

 長野地区にある約110世帯の半数以上が地震で全半壊した。それでも多くの農家がコメやトマトを植え、再建を図っていた。村によると長野地区のほか立野や下田、川後田などの各地区で土砂流入や倒壊など少なくとも計十数世帯が被災。ただ、この間の雨で調査が追い付かず、全容は把握できていない。

 土石流で犠牲者こそ出なかったが、実家が流された男性(60)は「みんな途方に暮れている」。パワーショベルで隣の敷地の土砂撤去を手伝っていた農林業長野正男さん(65)は「踏んだり蹴ったりというか、踏みつぶされてしまった感じだ」と悔しさをにじませた。(小野宏明、堀江利雅)

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