東北から熊本へ支援の輪

 詩作を通して東日本大震災で肉親を亡くした子どもたちを支援する募金活動をしている菊田郁(本名・郁朗)さん(70)=宮城県登米市=に会ったのは、4年前のこと。菊田さんの活動を知って、被災地を訪れる際に取材を申し込んだところ、「九州から来るのなら」と現地案内を買って出てくれた。

 菊田さんは元中学教師。かつて勤務した宮城県沿岸部の惨状と亡くなった多くの命に心を痛め、自作の詩を集めた冊子「沈黙の海」を出版。代金の一部(300円)をみやぎ震災遺児基金に寄せている。これまでの募金の総額は140万円を超えた。

 宮城県女川町の女川駅前の広場にあった四つの鐘は駅舎とともに津波に流されたが、その一つが奇跡的にがれきの中から見つかった。

 震災から5年。その鐘を詩にしたためた。

 <女川の空に/女川の海に/鐘よ/新しい希望の歌を/未来へ続く希望の虹をかけよ>

 表題作となるこの作品など31編の詩をまとめて新たな詩集「希望の鐘」の出版準備を進めている最中、熊本地震が発生した。「東北も全国から支援を受けた。少しでも熊本の被災地の力になりたい」

 東京の日本橋公会堂で6月22日、筝曲演奏に合わせ「希望の鐘」など自作詩を朗読し、会場で詩集を販売。売上金の一部を熊本地震で被災した益城町の小中学校支援に贈ることにした。

 宮城県の被災地は徐々に復興の兆しが見えてきているものの、地域によって格差が大きく、巨大なコンクリートの防潮堤が人と海とを隔ててしまうようで「残念でならない」と言う。菊田さんは詩集のあとがきに、こうつづる。

 「何よりも大きな課題は心の復興である。被災者にとって、時間はまだ止まったままなのである」

 東北からの警句と受け止めたい。(甲斐壮一)

©株式会社熊本日日新聞社

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