地引き網漁復活 27日に体験イベント網元の加藤さん

 鎌倉で江戸時代から続き、一時途絶えていた地引き網漁が復活した。本格的な漁ではなく、客が網を引き上げる観光型だが、網元の加藤彰一さん(65)は「子どもたちの心に深く残る経験になる」と約10年ぶりの再開を決意。かつて地引き網を体験した人たちの復活を望む声に背中を押された。27日には体験イベントが開かれる。

 加藤さんは300年前から続いた網元「長四郎網」の10代目。学生時代に父長三郎さんの船に乗り、漁を手伝った。幼稚園や保育園から体験の依頼も受けた。

 大学を出て就職。仕事で知り合った若者が偶然にも漁の体験に参加していた。当時の記憶を鮮明に語る若者に驚いた。長三郎さんが体調を崩して以降休止していたが、「いつ再開するの」と期待する声も多かった。「子どもにすごく喜んでもらえる。おやじから漁の技術も教わったし、やってみよう」。定年退職を機に、昨年8月に再開した。

 潮の流れや海底の地形、海上での位置を念頭に置き、船で1キロほど沖へ進んで網を仕掛ける。参加者は砂浜で左右に分かれ、タイミングよく網を引っ張る。スズキやカマス、イワシなど、多いときには数トンが掛かる。

 体験イベントを企画したのは、地元の有志団体「chameleon(カメレオン)」。代表の宮部誠二郎さん(29)=鎌倉市=もまた、保育園のころ地引き網を体験し「地元の海にこんな魚がいる」と感動した。生きた魚に触れ、海を知る機会になると考え、加藤さんに協力を頼んだ。

 「気持ちをそろえて網を引き、魚が捕れれば一生の思い出になる」と加藤さん。伝統的な漁法の魅力は若い世代に確実に伝わっている。

 イベントは「鎌倉海のカーニバル」の一環。午前9時に、坂ノ下交差点と由比ガ浜4丁目交差点の間の信号から砂浜に下りて集合。1人1500円。問い合わせはメール(chameleon.contact@gmail.com)。

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