海や船描き「常に挑戦」故柳原良平さん、旧友らしのぶ

 「アンクルトリス」で知られる画家で昨夏に84歳で亡くなったイラストレーター柳原良平さんが描いた「海と船と港の絵」をテーマにした座談会が17日、横浜みなと博物館(横浜市西区)に隣接する日本丸訓練センターで開かれた。旧友らが「海や船に関心を持ってほしいという気持ちを作品に込めて、常に挑戦し続けた」と評価し、その功績をしのんだ。

 企画展「柳原良平 海と船と港のギャラリー」の関連行事として同館が主催。志澤政勝館長をはじめ、柳原さんにゆかりがある専門家3人が登壇した。柳原さんと若手イラストレーター原子高志さんが競作した展示会を企画したデザインユニットTGB lab./TGB design代表の石浦克さんは「自分に固執することなく、新たな分野に挑戦していた。オンリーワンの生き方は素晴らしい」と話した。

 美術史家で帝京大教授の岡部昌幸さんは、20世紀のデザイン史と絵画史における功績を高く評価。絵描きから始まった点など、フランスのグラフィックデザイナー、アドルフ・ムーロン・カッサンドルと共通点があるとし、「20世紀の優れたデザインや前衛芸術の影響を受けつつも、独自の世界をつくっていた」と振り返った。

 日本海事史学会副会長の山田廸生(みちお)さんは「海や船に関心を持ってくれる人が一人でも増えてほしいという気持ちで描いていた」。志澤館長は、自分で港を歩いて観察していたエピソードを紹介し、「大胆な省略や圧縮といった独自の技法を使って船に親しみを持ってもらおうとしていた」と評価した。

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