住宅地が4年ぶりに下落 神奈川県内基準地価

 神奈川県は21日、県内921地点の7月1日時点での基準地価を公表した。用途別の平均変動率で、住宅地はマイナス0・2%(前年はプラス0・1%)となり、4年ぶりに下落に転じた。都心近接性に優れた横浜や川崎の駅徒歩圏でも地価高騰による割高感や金融市場の先行き不透明感が影響して上昇幅が縮小。人口減少や高齢化が進む三浦半島や県西地域の一部では下落幅が拡大した。一方、商業地はプラス1・3%で前年並み、工業地は同2・3%(プラス1・5%)で4年連続上昇となった。(神奈川県内基準地価一覧は21日付の神奈川新聞16・17面を参照) 住宅地は634の継続地点のうち、241地点が上昇し、240地点が下落。前回調査と比べ、全体に占める上昇地点の割合が3%以上減り、下落地点の割合が6%近く増えた。

 市区町村ごとの平均変動率をみると、前年下落した相模原市緑区が上昇に転じたが、前年上昇した31市区のうち、川崎市麻生区、鎌倉市、茅ケ崎市が下落。上昇地域は29市区と縮小した。けん引役の横浜、川崎両市もそれぞれプラス0・9%で、前回に比べ上昇幅は縮小した。大和市は相鉄とJR・東急の相互直通事業への期待感を反映し、海老名市は海老名駅前の再開発の進行で0・3%(前年は0・1%)に、それぞれ上昇幅が拡大した。

 下落傾向が続く市町村では真鶴町がマイナス5・9%(マイナス4・2%)、三浦市同4・9%(同5・5%)、湯河原町同4・5%(同4・3%)と続いた。

 商業地は218の継続地点のうち、上昇または横ばいだったのが176地点。全体の80・7%で、前年(80・2%)と同水準だった。

 高度商業地の横浜、川崎両市はそれぞれプラス2・5%(前年と横ばい)と同2・8%(プラス2・9%)。横浜市は、横浜駅西口の駅ビル再開発への期待感や観光地としてのにぎわいが増した中華街を含む6地点が上昇率10位以内を占めた。一方で川崎市は、昨年1位だった武蔵小杉駅付近の再開発が進展。「商業集積や繁華性の高まりにやや落ち着きが見られる」(県)などとして上昇幅が縮小した。

 箱根山・大涌谷周辺での噴火警戒レベルが引き下げられ、箱根ロープウェイが段階的に復旧した箱根町は2年ぶりの上昇に転じた。

 住宅地の平均価格は17万4500円。価格トップは5年連続で高級住宅地の横浜市中区山手町だった。商業地の平均価格は49万3900円で、今年選定替えされた同市西区南幸1丁目(横浜駅西口・横浜モアーズ前)の地点が価格トップだった。

 基準地価は、知事が国土利用計画法施行令の規定に基づき、土地取引の規則を適正に行うため、年1回、基準値の標準価格を判定、公表している。基準値の1平方メートル当たりの価格で国の公示地価(1月1日時点)とともに、一般の土地取引価格の指標などとして利用される。県は21日、県公報で公告する。

 ◆基準地価 国土利用計画法に基づき、都道府県が毎年7月1日時点で調べる基準地の価格。土地取引の目安となり、国土交通省がまとめて発表する。不動産鑑定士が周辺の取引事例などから1平方メートル当たりの価格を算定。今回の調査対象は2万1657地点。このうち東京電力福島第1原発事故の避難指示区域内にある福島県の28地点と、熊本地震で被災した熊本県の3地点は調査できなかった。国交省が1月1日時点で調べる公示地価を補完する役割があり、対象地点が一部共通している。

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