不特定の患者狙い犯行か 未使用の点滴に異物混入の可能性 横浜患者殺害

 横浜市神奈川区の「大口病院」で点滴に異物が混入され入院患者の男性(88)=同市港北区=が殺害された事件で、異物の混入は未使用段階だった可能性が高いことが24日、捜査関係者への取材で分かった。男性の点滴からは、殺菌剤などに使う界面活性剤の成分が検出されたことも判明。神奈川署特別捜査本部は、院内にある在庫の点滴袋にも異物が混入している疑いがあり、不特定の患者を狙った可能性があるとみて、詳しく調べている。

 特捜本部などによると、男性の点滴は、19日午後10時に当直の女性看護師が交換。20日午前4時に心拍数の急激な低下を告げるアラームで異変に気付いたが、その約1時間前に血圧や脈拍を測るなどした際は異常は確認されなかった。当直時間帯は約1時間間隔で見回りも行われていた。

 特別捜査本部は、血圧測定などを行った巡回後からアラームで異変に気付くまでの間に異物を混入することは難しいことなどから、何者かが点滴袋を使用する前に異物を混入した可能性が高いとみている。

 一方、容体急変後に同看護師が点滴袋を撤収したところ、点滴袋には目立った穴や破れはなかったが、内部の液体が泡立っていたことが新たに判明。界面活性剤は洗剤やせっけん、医薬品などにも含まれる成分で、4階のナースステーションにも含有製品があったという。

 また、男性が入院していた4階では、未使用の点滴袋がナースステーションのテーブルや洗面台などに無施錠の状態で保管され、誰でも手に取ることが可能な状況だった。点滴袋は原則、1日の使用分をその日に薬剤部から配布される仕組みだが、事件前日は祝日に当たるため、通常より多くの在庫が病棟にあったとみられる。

 特捜本部は今後、男性と同じフロアに入院し、今月18日以降に病死と診断された80〜90代の男女3人についても、経緯に不審な点がないか改めて調べる方針。80代の男性2人は点滴を受けており、袋に残っていた微量の内容物の鑑定も進める。3人の司法解剖の結果は週明けにも出るとみられる。

 大口病院は24日、高橋洋一院長が記者会見し、「ご遺族に哀悼の意を表する。一日も早い真相究明を願っている」と述べ、犯人が院内の人物の可能性も否定できないとの見解を示した。

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