病院関係者に衝撃と動揺 横浜点滴殺人

 入院中の男性が相次いで殺害された大口病院(横浜市神奈川区)の連続殺人事件。2人目の中毒死判明から一夜明けた27日、終末期を迎えた高齢者の受け皿が揺らぐ事態に、病院関係者にあらためて衝撃と動揺が広がった。「信念と誇りを壊され、悔しくてたまらない」「なぜこんな事件が起きたのか」−。医師らは遺族の無念に思いを寄せながら真相解明を願う。

 「行き場のない終末期の患者の受け皿として、信念と誇りを持ってやってきた。私たちが目指してきた医療が、このような形で壊されたことにショックと憤りしかない」 27日、横浜市内で取材に応じた高橋洋一院長は、険しい表情で語った。

 大口病院は、主に高齢者対象の医療機関として地域に根差し、終末期の患者を積極的に受け入れてきた。ウェブサイトには「在宅療養の継続困難時には入院し、在宅可能になったら退院を繰り返しながら療養を支える」などと記されている。

 高橋院長は「死亡した2人とも入院時から重篤な症状だったが、最期を静かに迎えさせてあげられなかった。誰がこんなことをしているのか、本当のことが知りたい」とうつむいた。

 「一部の人間のせいで今までの信頼が失われるなんて、悔しくてたまらない」。同病院で患者に向き合ってきた複数の非常勤医師も表情を曇らせた。

 これまで多くの病院に勤務してきたが、その中でも大口病院の看護スタッフは「トップクラス」だと感じている。寝たきり患者のわずかな体調の変化を見逃さずに報告し、患者の処置に汗を流した際は感謝の言葉を忘れない。医師は「患者を家族のように思っていなければ言えない言葉。温かい人がたくさんいる」。

 しかし、2人の殺害は「内部の可能性も否定できない」(高橋院長)状況だ。医師によると、ナースステーションには医師や看護師、看護助手らが目まぐるしく出入りする。麻薬や劇薬などは施錠管理を義務付けているが、栄養剤や消毒液の管理は無施錠で、医療機器を洗浄する消毒液はどこにでも置いてある。

 医師はスタッフの潔白を信じた上で、「管理体制はどの病院も同じ。(内部関係者の)悪意のある行為は想定しておらず、鍵を掛ければ済む話ではない」と訴え、こう続けた。

 「患者を支える場所で、どうしてこんな事件が起きたのか。真相は絶対に明らかにしなければならない」

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