【特集】日朝の学生が平壌で対話

「核放棄を」「国を守るため」

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意見交換する日本の大学生と平壌外国語大の学生=8月(共同)
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平壌市内で交流する日朝の学生たち=8月(共同)
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5回目の核実験を報じる平壌市内の大型スクリーン=9月(共同)

 北朝鮮が5回目の核実験を実施してから1カ月余り。さらなる挑発行動に日米韓が警戒を強めるが、北朝鮮の人々の肉声はなかなか聞こえてこない。8月末、日本人大学生が民間交流で平壌を訪れ、北朝鮮の大学生と核兵器や平和について語り合った。「核開発は国を守るためだ」。金正恩体制と同じ論理を主張する同世代の若者に、原爆の悲惨さを伝え、「核放棄を」と訴えた広島の学生ら。対話を模索した若者の姿を同行した記者がリポートする。

 ▽深まる交流

 この催しは日朝間で文化交流を続けている日本の非政府組織(NGO)の呼び掛けで、2012年から毎年続いている。今年は日本語を専攻する平壌外国語大の11人と、日本国内から応募した大学生8人が参加、3日間の日程で行われた。

 記者は12年から同行取材を始め、今回で4度目。当初は、北朝鮮側から歴史や政治的な話題を避けるように言われ、日本人の生活が分かる写真を見せることも“ご法度”だった。だが、回を重ねるごとに交流時間が増え、話題の制約も徐々に無くなっていった。今年も担当教授や当局案内人が近くで見ていたが、会話の内容は学生たちに任せられていた。

 ▽核の是非

 「米国の脅威から国を守るために核は必要」。平壌外大の趙耿雅(チョウ・ギョンア)さん(22)は、広島市立大2年の堀川光生さん(20)と語り合う中で、断言した。大学の授業で被爆者の証言を集めた日本のドキュメンタリーを見て、漫画「はだしのゲン」も読んだという趙さんは、広島に関心を持ったと話す。

 広島市出身の堀川さんは、被爆して生き延びた曽祖父のことを家族から聞いて育った。原爆投下の日に曽祖父が体験した話を語り「核は非人道的。将来的に全て放棄すべきだ」と訴えた。

 深刻な表情で「怖い」と漏らした趙さんだが、「平壌を広島にしたくない。やはり核の抑止力で守りを固めないといけない」。平和には核が不可欠という考えに、堀川さんは戸惑いを隠せなかった。2人の議論を後で知った申恵正(シン・ヘジョン)さん(22)は「世界中から核がなくなれば、わが国も放棄する。そういう平和な未来を願っている」と語った。

 ▽共感と隔たり

 恋愛話で盛り上がり、北朝鮮製のスマホのカメラでおどけた表情を撮ったり、人気の米国製ゲームを披露したりする平壌の学生の姿は、日本の若者と変わらない。「同じ笑顔に安心した」と笑い合う日朝の学生たちだが、核・ミサイル問題に話が及ぶと乗り越え難い隔たりに直面した。

 北朝鮮が8月に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した翌日、朝鮮労働党機関紙、労働新聞が一面で大きく報じ、平壌外大生は日本人の反応を知りたがった。学習院大2年の旭玲央さん(21)が「日本人には脅威で、発射成功を喜ぶのは理解できない」と話すと、和やかだった空気が一変。動揺した外大生は「やめてほしいなら在日米軍を駆逐して」と気色ばんだ。

 帰国の朝、外大生は複雑な表情で向き合っていた。「いつか再会できるように、これからも日本語に関わっていく。関係改善のために頑張りたい」。涙を浮かべた趙さんは日本人に約束し、空港で手を振り続けていた。

 帰国後間もなく、北朝鮮は核実験を強行し、依然と脅威は続く。「お互い平和を追求しながら、見ている先と手段が全く違う。根本的な部分での理解の難しさを痛感した」。東京大4年の神宮司実玲さん(22)は交流を振り返り悔しさをにじませたが、「絶望感に背を向けない。自分たちができることを考え続けたい」と前を向いた。

 参加した大学生は各地で報告会を行う予定。問い合わせは「南北コリアと日本のともだち展実行委員会事務局」、電話03(3834)9808。(共同通信=渡辺夏目)

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