【特集】池袋“新中華街”の実態

「日常の中国」、裏で危険も

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池袋駅北口近くにある中国食料・雑貨品店
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中国語のフリーペーパーを手に取る坂東忠信氏
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警察庁の発表資料より作成
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毎年恒例の池袋のふくろ祭りで行われている「国際交流みこし」。中国人留学生らも多く参加する

 東京・池袋に中国人が集中し「新チャイナタウン」と呼ばれるようになって久しい。仕事にやって来る人を含めた昼間の中国人人口は約3万人、「店の数だけなら横浜中華街より多い」との指摘も。ただ横浜、神戸、長崎といった伝統的な中華街にはない「日常の中国」を体験できるという見方の一方で、「中国系不良」の拠点化といった治安面の懸念も存在する。実態をのぞいた。

 ▽見えないが…

 池袋駅北口を出ると中国の食料・雑貨品店の看板が目に入る。通りを挟んだビルには食料品店や書店の名前がでかでかと書かれている。銀座や秋葉原のような爆買いの中国人団体こそいないが、そこここから聞こえるのは中国語。ところが、そこから数百メートル四方に広がる繁華街の中は中国語の看板は点在する程度でそれほど目につかない。

 1991年に留学生として来日、2005年から西池袋に住み日中関係の書籍の出版業を営む段躍中さん(58)は「一般の人には見えないが、ほぼ全部が中国系の店や会社といった雑居ビルがいっぱいある」と説明。食料・日用品のほか、飲食店、水商売から旅行社、自動車学校、保育園、理髪店まで何でもあると言い「誰も数えてないが、飲食店で200~300、全業種を合わせると600以上ある」と話した。

 1978年からの改革開放政策の影響で増え始めた中国人留学生らが池袋に集まり出したのは80年代後半。理由は(1)周辺に日本語学校が多いこと(2)都内中心部では比較的家賃が安いこと(3)さらに安い埼玉県の玄関口になっていること―などだ。「激増したのは2000年代」と段さん。「今は駅から少し離れた高級マンションや一戸建てを買って住む人も大勢いる」と話した。

 ▽ゆっくりじっくり

 「チャイナタウン化」で伝統的な中華街では手に入らない食材などを求めて来る日本人も増えるなど町が活気づいた半面、治安面の不安も。至るところで配布されているフリーペーパーには怪しげな広告があふれる。段さんは「整体やマッサージとなっているが実際は風俗店。店の実態は誰にも分からない。中国人マフィアがいることだけは間違いない」と断言した。

 「警察も実態把握はできていないだろう」と話すのは元警視庁刑事・通訳捜査官の坂東忠信氏(48)。新宿署や池袋署の勤務経験もある坂東氏は「今は通訳捜査官が減っている」と指摘。「言葉が分からないと110番があって現場に行っても話も聞けない。ましてや協力者をつくったり内偵が必要な捜査をすることは、はなからできない。非常に危険な状態」と厳しい現状認識を示した。

 問題なのは「一発狙いから着実な犯罪へのシフト」。かつて中国人の不法滞在の主流は密航。見つかるまでに稼ぐ必要がある密航者は強盗など手荒な犯罪に手を染める。しかしここ数年増えているのは留学生や技能実習生などとしての入国滞在条件を満たす他人の個人情報と、自分の写真で作った“本物”のパスポートで来日する「なりすまし」。犯罪内容は偽装結婚や各種証書の偽造など「ゆっくりじっくり稼げるもの」に変化。坂東氏は「来日外国人の犯罪検挙件数はここ10年以上減少傾向だが平和になったわけじゃない。目立たなくなっただけ」と話した。

 ▽いい町

 政府は東京五輪を見据え訪日外国人を増やす政策を進める。しかし坂東氏が池袋などを念頭に懸念するのは民泊や外国人参政権の問題だ。「今後出てきそうなのが深夜以降の空きベッドを利用した“マッサージ店”の民泊参入。今は規制緩和論が先行しているが、警察への届け出など制度を整えないと怪しい人間が入ってくる」。

 これまで法制化の動きもあったが賛否の分かれる外国人参政権については「警察はおろか日本の暴力団さえ入り込めない世界でトラブル解決屋として“地域の有力者”となった人物が影響力を行使しかねない」と警戒した。

 治安が悪化し不利益を被るのは犯罪などとは関係のない一般の中国人。草の根の日中交流にも悪影響が出るだろう。地元町会の会長(74)は「最近はきちんと商店会費を払う中国人の店も増えてきた。一緒にいい町を作ろうという気持ちだろう」と話す。段さんは「我々はここでは外国人。共存共栄していくには地元に貢献するところから始めないといけない」と話した。(共同通信=松村圭)

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