「葛城事件」の三浦友和が圧巻 「記者の日本映画ベスト10」

©株式会社神奈川新聞社

 師走。ファンの関心は今年のベスト10に向く。ヨコハマ映画祭の選考結果は近く発表されるが、それに先立って、恒例「記者が選ぶ日本映画ベスト10」(別表)を紹介する。

 「葛城事件」は日本型家父長制の悲喜劇と崩壊を鮮烈に描いた。三浦友和が「幸福な家庭」の夢想にとりつかれた独裁者を、すさまじい気迫で演じて圧巻=写真。オリジナル脚本という点も評価したい。

 「怒り」と「淵に立つ」が映し出した現代人の寄る辺なさが胸に染みた。「日本で一番悪い奴ら」には「仁義なき戦い」に通じる普遍性がある。

 公開時に紙面で紹介できなかった「太陽の蓋」。3・11に官邸で何があったのかを緊迫のドラマに再現、核をめぐる危機的状況は少しも変わっていない現実を突き付けた。上映時間が5時間を超す「ハッピーアワー」は斬新さに心引かれた。

 小道具・衣装から対局シーンの長回しまで“本物”にこだわった「聖(さとし)の青春」、西川美和監督の人間凝視が鋭い「永い言い訳」、おしゃべりだけの地味な青春を映像の奥行きと広がりで分厚く見せた「セトウツミ」も収穫。「続・深夜食堂」の演出と美術(セット)は、いぶし銀だ。

 主演男優賞は「葛城事件」の三浦友和、同・女優賞は「淵に立つ」の筒井真理子、助演男優賞は「淵に立つ」の古舘寛治、同・女優賞は「怒り」の宮崎あおいに贈りたい。【1】葛城事件(赤堀雅秋)【2】怒り(李相日)【3】淵に立つ(深田晃司)【4】日本で一番悪い奴ら(白石和弥)【5】太陽の蓋(佐藤太)【6】ハッピーアワー(浜口竜介)【7】聖の青春(森義隆)【8】永い言い訳(西川美和)【9】セトウツミ(大森立嗣)【10】続・深夜食堂(松岡錠司)※カッコ内は監督