盗撮、手口の主流はスマホの消音アプリ悪用 横浜駅が“定番スポット”

 盗撮被害が後を絶たない。県警によると、最近はスマートフォンを使い、特にシャッター音が出ないアプリを悪用する手口が主流だ。13〜69歳のスマホの普及率は6割に達しており、持ち歩いても違和感がなく、「盗撮しやすい時代」と県警。画像がひとたびインターネット上に投稿されれば回収は不可能な上、「スカートの中を見たい」から「触りたい」「家の中を見たい」と犯行がエスカレートし、より深刻な被害を招く危険性もはらむ。県警は取り締まりを進めるとともに「自衛を」と注意を呼び掛けている。

 県警鉄道警察隊によると、県内の県迷惑行為防止条例違反容疑(盗撮、痴漢、のぞき込みなど)の検挙件数は2014年が1148件、15年が1054件。横ばいで推移する中、盗撮容疑が8〜9割を占める。

 県内54署中、盗撮容疑の検挙件数が最も多いのは戸部署管内。条例違反容疑全体の2割程度を占め、その大部分が“盗撮の定番スポット”として知られる横浜駅での犯行だ。

 同駅での検挙件数の多さについて、同署は「混雑しており、人混みに紛れて盗撮しやすいのでは」と指摘。同隊は「ネット上で盗撮しやすい場所として紹介されている」と明かす。ネットを見て犯行場所に選んだ容疑者もいたという。

 盗撮の主なツールはスマホだ。県警によると、かつては手鏡や小型ビデオカメラなどが主流だったが、スマホの普及とともに一変。手に持ってスカートの下に差し入れたり、カバンに仕込んで足元に置くなど使い方はさまざまだ。

 ただ、「必ずと言っていいほど共通している」(同隊)のが、シャッター音を消すアプリの悪用。ネット上には多種多様なシャッター音を消すアプリがあり、中には撮影時に画面を黒くしたり、他のページを閲覧しているように偽装したりできるものもある。

 アプリの紹介ページでは「眠っている赤ちゃんを撮影するとき」「音に敏感なペットを撮影するとき」と活用事例を紹介。「盗撮厳禁」との注意書きもあるが、ネット上では「完全に盗撮専用」「犯罪用のアプリ」といったユーザーの意見も散見される。

 県警によると、容疑者の多くは「女性の下着が見たかった」と供述する。ただ、「SNS(会員制交流サイト)で友達同士見せ合って楽しむため」という高校生や、「うまく撮れた」とゲーム感覚で盗撮していた若者もいた。

 また、狙われるのは「スカートの中」にとどまらない。性的嗜好(しこう)はさまざまで、スマホに1万枚以上の「女性の脚」の撮影データが残されていたケースも。同署は「検挙されるのは氷山の一角。実際の被害は天文学的な数字かもしれない」と危機感を強める。

 入学したばかりの高校1年生を狙った4月と制服姿が戻って来る夏休み明けの9月が被害の多い時期。ただ、冬場も変わらず被害が発生している。

 手口は巧妙化しているものの、「ミニスカートを目で追い、エスカレーターで真後ろに立つなど、盗撮犯の動きは怪しいのですぐに分かる」と同隊幹部。特にエスカレーター利用時が狙われやすく、県警は「後ろを振り返ったり、体の向きを斜めにしたりと注意することで、盗撮を防ぐことができる。取り締まりとともに一緒に被害をなくしていきたい」と話している。

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