「清川村の初心者」奔走 夢は「地元食材の飲食店開業」

 人口減少に歯止めをかける地方創生の切り札と期待されている「地域おこし協力隊」。県内で初めて採用した清川村の取り組みが半年余りを経過した。川崎市多摩区から移住した稲葉智美さん(32)は都内のイタリア料理店に約10年間勤めていた経験を生かし、「栽培した西洋野菜を使ったレストラン開業」の夢を持って奔走している。

 協力隊制度は、総務省が2009年度に創設。過疎問題に直面する自治体で活用が進んでいる。県内では同村が募集、16年6月に2人を採用(うち1人が同10月辞任)した。

 稲葉さんは同村煤ケ谷に住み、役場前の「道の駅」を拠点に活動している。委嘱された業務内容は道の駅内の店舗販売の企画支援や特産品の開発などだ。

 「清川村初心者」の稲葉さんが、最初に取り組んだのが「道の駅・清川おこ誌」の作成。道の駅で一番人気の野菜の生産者、陶芸家、養豚業者、猟友会を取材し、自身の活動報告と一緒に毎月1回、紹介してきた。

 青龍祭や花火大会、運動会など村内のイベントには、少しでも顔を覚えてもらおうと積極的に参加しているという。

 そうした地道な活動を通じて知り合ったのがNPO法人「結の樹・よってけし」理事長の岩澤克美さん(51)。2年前に高齢者への弁当配達やジャムづくりなどの地域活性化事業を行うために村内の空き家を活用して起業した。

 岩澤さんが声を掛けてケーキづくりを共同で開始、16年12月16日には稲葉さんがイタリア料理の腕を披露、住民を対象にしたランチ会も初めて開いた。

 岩澤さんは「私も約10年前に山梨県から嫁に来たよそ者。人口3千人、みんなの顔が見える村の暮らしが気に入っている。少子高齢化が進む中、住民が元気になることをしたいという思いは同じ。失敗なんか恐れないでどんどんやってほしい」と応援している。

 希望していた野菜づくりも、活動に賛同する住民から遊休農地を提供されて始めた。猛暑下の畑作業や虫やシカの食害に悩まされながら通う毎日だ。

 半年間を振り返って稲葉さんは「早く活動を形にしなければという焦りはある。特産品の開発は試行錯誤であり、商品として売る大変さを痛感している。任期の3年間頑張って地場産の食材を使った料理店をここで持つことが夢」と話している。

 村政策推進課は「村が紹介しなくても、自ら人脈を広げる努力をしている。協力隊は4人まで増員する予定なので、起業に向けた相談など支援策も検討していきたい」と説明している。

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