「出て行け」はヘイト 法務省見解、自治体に典型例

 ヘイトスピーチ解消法で許されないものとされる「不当な差別的言動」ついて法務省がまとめた基本的な考え方の詳細が10日までに分かった。どのような言動が該当するかは背景や文脈、趣旨を「総合的に考慮して判断」する必要があるとした上で典型例を列挙。昨年末に考え方を整理し、ヘイトデモ・街宣が多発している神奈川県川崎市や東京都中央区、大阪市など全国13自治体に初めて示していた。

 解消法が定義している差別的言動を(1)危害の告知など脅迫的言動(2)著しい侮辱(3)地域社会からの排除をあおる言動−の3類型に分け、典型例を示した。

 (1)には「○○人は殺せ」「○○人の女をレイプしろ」などを挙げ、(2)には蔑称で呼んだり、ゴキブリなどの昆虫や動物、モノに例えたりする言動が該当し得るとした。隠語や略語、伏せ字を使うケースがあることから文脈や意味合いを踏まえる必要があるとした。

 (3)には「○○人はこの町から出て行け」「○○人を強制送還すべき」などを例示。加えて、条件や理由を付けて正当な言論を装う例がみられると指摘。「○○人は全員犯罪者だから日本から出て行け」のように、付された理由が意味をなさず、排除する趣旨にほかならない場合は該当するとの見解を記した。

 一方、同じ文言でも状況や背景、前後の文脈により趣旨や意味が変わり得ることから、一律の判断基準を設けるのは困難との考えも示し、個別具体的な状況を踏まえた判断が必要としている。同省人権擁護局はさらに「挙げているのはあくまで現段階での典型例。新たな事例の発生も想定され、更新することもあり得る」と話す。

 解消法は国と自治体にヘイトスピーチの根絶に向けた取り組みを求めており、自治体からは判断基準や具体例を求める声が上がっていた。中でも、公的施設でのヘイトスピーチを事前規制するガイドラインの策定を表明した川崎市では、規制する言動をどう定義するかが今後の課題となっている。市人権・男女共同参画室の担当者は「共通の理解の仕方が整理されたのは良かった。ただ、現在進行形の問題であり、国には継続的な情報提供と事例の充実を求めたい」としている。

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