「小児の心のケア」など特殊外来を開設 阿蘇医療センター

画像阿蘇医療センターに昨年10月開設された「小児の心のケア」外来の診療を担う熊本大病院小児科の上土井貴子助教(左)=阿蘇市

 熊本県阿蘇市黒川の阿蘇医療センター(甲斐豊院長)が、熊本地震による小児のストレスや交通事情悪化に対応するため、小児の心のケアや神経難病など専門性の高い特殊外来3科を開設した。熊本市などの医療機関への受診・通院が困難になった患者らの受け皿となり、地域の中核病院としての機能強化を図る。

 「じっとしている練習をしましょう」「はい、止まって」-。

 昨年12月末の同センター。熊本市の熊本大医学部付属病院小児科の上土井[じょうどい]貴子助教(小児発達学)が、多動性障害の女児に語りかけた。女児は10月から上土井助教の治療を受け始め、この日は2度目の受診。同席した母親は、投薬効果などの説明にうなずいた。センターに「小児の心のケア」外来が開設されるまで、女児は専門医の診療を受けたことはなかったという。

 同医療センターは数年前から順次、リウマチ膠原[こうげん]病内科や乳腺内分泌外科など専門性の高い特殊外来を開設。ただ、阿蘇地域には、医療環境が充実し地理的に近い熊本市や近郊の医療機関を受診する患者が多く、甲斐院長は「地域の需要に十分応えられていなかった」と打ち明ける。

 そこに熊本地震が発生。国道57号やJR豊肥線の寸断で熊本市方面との往来が不便になり、状況が一変した。

 地震後、同医療センターには、熊本市に通院していた人工呼吸が必要な障害児数人が入院。舌がんなどのため阿蘇地域から熊本大病院の歯科口腔[こうくう]外科に通院していた十数人全員が、地震後に受診していないことも分かったという。

 甲斐院長は「専門的な治療が可能な大学病院の役割を一部担う必要性を感じた」と振り返り、県に救急搬送体制などと合わせ、財源を含む通院困難者のための環境整備を要望。一方で、公営企業法の全部適用を受ける同医療センターは独自に、熊本大病院から医師4人の派遣協力を取り付けた。

 内科や整形外科など従来の12診療科に加えて昨秋、小児の心のケア、アレルギーなどの小児疾患、神経難病の特殊専門外来3科を開設。現在、各科で月1回か2カ月に1回の診療体制を取り、毎回、それぞれ数人~十数人が受診している。

 上土井医師は「特殊外来の開設で潜在的な患者の受診機会が増え、早期に治療できるのは大きな利点。ただし、本来構築しておくべき地域医療圏の課題が地震で表面化したとも言える」と説明する。同医療センターには患者らから、「地元に通院できて助かる」と歓迎の声が寄せられているという。

 一方で甲斐院長は、現状を踏まえて厳しく見つめる。「阿蘇郡市には、ニーズの高い耳鼻科や皮膚科の専門医が不足し、開設を求める声が強い。特殊外来も扉を開けた段階で、がんや肝炎、歯科口腔外科などの診療体制も早急に整える必要がある」(岡本幸浩)

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