発達障害児へ教育熱 通信講座の資料請求175倍に

 自閉症やアスペルガー症候群といった発達障害児を対象にした通信教育や塾への注目が高まっている。大手予備校が運営する通信講座は、療育プログラムへの資料請求が開始7年で約175倍に。背景には、発達障害への認知度が近年急激に高まったことや早期支援の必要性が知られるようになったことなどが挙げられる。県内でも塾の教室開設が進む一方、支援ニーズにサービスが追い付かない状況も生じている。

 味気ないカラーイラストと1行だけの問題文が載る折り畳み式プリント−。

 四谷学院の通信講座(横浜市西区)「療育55段階プログラム 55レッスン」の教材は、発達障害児にみられる「誇張表現された絵が苦手」「複数の問題を同時に解くことが苦手」といった傾向に対応。1問当たり約10〜15分と子どものペースで進められ、保護者向けの冊子やメールによる相談支援などもある。

 運営会社によると、2008年春にスタートした講座はインターネットや口コミなどで評判に。15年の受講者は開始当初の19・3倍、資料請求は175・3倍にまで増加したという。

 07年に義務教育の流れが「特殊教育」から個々の習熟度に応じた「特別支援教育」に移行したことを受けた開講だったが、反響は想定を大きく超えた。近年では、発達障害児への適切な支援の必要性が改めて指摘され、同社は「支援塾がある都市部以外でも受講できる通信講座が受けているのでは」と分析する。

 発達障害児向けの塾も教室数を増やしている。障害者の就労支援会社リタリコ(東京都)が運営する塾「リタリコジュニア」は、横浜や川崎など県内で15教室を展開。コミュニケーション能力を育むプログラムや学習支援など「子どもの特性に合ったプログラムを保護者らと半年かけて丁寧に作り上げる」特色あるカリキュラムが好評だ。

 事業開始の11年度に100人ほどだった会員は約8千人に急増。横浜などで学習塾「TEENS」を運営するカイエン(東京都)も、昨春オープンした川崎の教室は開所前に定員に達した。

 ただ、膨らむニーズにサービスが追い付かない状況も生じている。リタリコは現在も約5千人が受講待ちの状況といい、担当者からは「人材育成にも時間がかかり、簡単に教室を増やせない」との声も聞こえてくる。成人の障害者支援事業を展開する同社は幼少期から正しいケアを行う必要性を痛感しており、「業界全体がもっと大きくなり、子どもたちの受け皿を広げられたら」としている。

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