〈時代の正体〉「入所者に選択肢を」 相模原の障害者施設建て替え

 【時代の正体取材班=成田 洋樹】相模原市緑区の「津久井やまゆり園」の建て替えを巡り、脳性まひがある東大先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎さん(39)は16日、入所者本人の意向を踏まえて議論を進めるべきとの考えを示した。「地域生活の体験など選択肢を増やした上で、居住先を選択してもらう必要がある」と述べ、家族らの意見を前提とする県の姿勢を拙速と批判。横浜市内で開かれた講演会で語った。

 熊谷さんは知的障害者の意思決定支援について、「選択してもらう前に選択肢をすべてそろえるのは基本」とした上で、施設やグループホームでの生活、1人暮らしを1週間ずつ体験させるなど、「障害者の表情を見ながら暮らしの満足感を確認する形での支援が大事」と強調。県の手法は「選択肢も用意しないで『さあ、どっちにする』なんて意味不明。開いた口がふさがらない」と批判した。

 講演会終了後は、神奈川新聞社の取材に「本人の意向を確認することを諦めてはいけない。地域生活を体験してもらって初めて、意思決定手続きが保障されたことになる」と話した。

 県は入所者に対し「自宅」「グループホーム」「やまゆり園のような施設」の三つの選択肢で聞き取り調査を実施し、「回答なし」「決められない」が合わせて6割に達した。黒岩祐治知事は意向を再確認する考えはないと明言している。

 講演会は県知的障害福祉協会の主催で、知的障害者施設の関係者ら約130人が参加した。

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