激変するMM21地区のいま 新高島駅周辺は開発ラッシュ

 昨年12月、神奈川県横浜・みなとみらい21(MM21)地区に明るいニュースが飛び込んできた。韓国の総合家電メーカー、LGエレクトロニクスの日本法人の進出だ。横浜高速鉄道みなとみらい線新高島駅近くの街区で、周辺では資生堂の研究所や京浜急行電鉄の本社ビルなどの建設計画も打ち出されている。開発の進む同地区の“今”を追った。

  LGエレクトロニクス・ジャパン(東京都中央区)が進出するのは「55−1」と呼ばれる街区。同社によると、品川など日本国内の研究部門を集約、およそ千人の従業員が働く研究開発拠点とする。2018年10月着工、21年4月の完成予定だ。

 ビルは地下1階、地上18階建てで、延べ床面積3万6775平方メートル。1、2階には、市民らがLGの技術や製品に触れることのできるスペースなどを開設。3〜12階は研究室や実験室、13〜17階は賃貸オフィスとする。LGの事業と親和性の高い企業の入居を進める方針だ。

 「LGグループにとって世界トップクラスの規模の研究開発拠点となる。日本が誇る技術力を横浜から世界に向けて発信したい」。同社の担当者は意気込む。MM21地区を選んだ理由については「空港からの利便性や優秀な人材の集めやすさなど、研究活動にとって魅力的な条件を備えている」と話す。

 全体の事業費は非公表。4千平方メートルの土地は横浜市から購入する。市が昨年実施した公募時の価格は約46億7200万円だった。公募には他に2件の提案があった中で、同社が選ばれた。「最先端の技術を持つグローバル企業の進出を歓迎している」と、市みなとみらい21推進課。地元への経済波及効果や、にぎわい創出に期待を寄せる。

  新高島駅エリアはこの1〜2年の間に、開発事業者が相次いで決定している。

 仮称・資生堂グローバルイノベーションセンター(56−2街区)や清水建設の賃貸オフィスビル(54街区)、京浜急行電鉄グループの本社(56−1街区)、さらには横浜アンパンマンこどもミュージアム&モールのマリノスタウン跡地への移転(61街区の一部)…。いずれも、20年の東京五輪までには完成する計画だ。

 パシフィコ横浜に隣接する20街区でも新たなMICE(国際会議などの総称)施設の整備が進んでおり、今後、人の流れが変化。横浜駅東口や新高島駅を経由してMM21地区へ訪れる人が増えることも予想される。

 そうした中、市が「最後の重要街区」と位置付けるのが53街区だ。約2万1千平方メートルという広大な敷地は、商業地域に区分。開発にあたっては、街区内に「グランモール軸」と呼ばれる歩行者の動線を確保することになっている。

 昨年、55−1街区と同時に公募を実施したが、約185億円という地価など諸条件がネックとなったのか、提案はゼロだった。市は期間を延長し、引き続き受け付けている。

 同課の担当者は、市の財政事情を考えれば、早期の売却が望ましいとした上で打ち明けた。「土地を小さく切り分けて売却することは簡単だが、まちづくりは100年の計。横浜駅東口方面からの玄関口にあたる場所でもあり、街のランドマークとなるような建物ができてくれたら…」 さらにこう続ける。「かつては公募しても(開発事業者が)決まるのは年に1件程度。競合相手もいないといったMMの“冬の時代”もあった。今は開発が進み、街のブランド力は確実に上がっている」。当面は条件を変えず、公募への提案を待つという。

 果たして市の期待通り、相次ぐ企業の進出が、新たな開発計画を呼び起こすきっかけとなるか−。

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