大地震、熊本市長が語る 川崎で特別講演

 熊本市の大西一史市長が23日、川崎市中原区のエポックなかはらで開かれた防災シンポジウムで特別講演した。昨年4月の熊本地震直後、行政の支援や救援物資が行き届かなかった混乱状況を振り返り、自らの身は自分で守る「自助」や地域で支え合う「共助」の大切さをあらためて訴えた。

 川崎市と市自主防災組織連絡協議会の主催で約800人が参加。大西市長は川崎市民らの支援活動に感謝した上で、陣頭指揮した熊本地震を振り返った。

 市長は4月14日夜、市役所近くのすし店で震度7の「前震」に見舞われ、すぐに市災害対策本部に入った。毛布の提供や飲料水の確保などに追われ、「地域防災計画という分厚いファイルはあったが、想定になかったことが次々に起き、何の役にも立たなかった」と語った。

 24時間眠らずに対応し、15日深夜に帰宅した時に震度7の「本震」が襲った。ドーンという突き上げ、全て落ちる照明、ガラスが割れる音、叫び声さえかき消す家の揺れ…。「しがみつくのが精いっぱい。一歩踏み出したところで割れたガラス破片で足を切って血だらけになった」とすさまじい揺れを振り返った。

 災害対応については「大変だったのは避難所。川崎市は指定避難所が175カ所。熊本は171カ所。熊本でも入りきれなかったのにこの想定で大丈夫か」と疑問を投げ掛けた。

 死者64人(直接死6人)のうち、車で寝泊まりした人のエコノミークラス症候群など関連死が58人に上った点は「死ななくてよかった命が失われたことは重く受け止めている」。川崎市民に向けては「行政の支援は3〜4日届かない。公助に限界があるから備蓄が大事。市民、地域、行政が力を結集し、より具体的に備えてほしい」と訴えた。

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