合併症予防へ口腔ケア 市・市大・歯科医師会協定

 がん治療や全身麻酔が必要な手術を受けた後の合併症を予防しようと、横浜市は8日、同市立大学、同市歯科医師会と手術前後の歯科医療に関する連携協定を結んだ。手術前後に適切な口腔(こうくう)ケアを行うことで、誤嚥(ごえん)性肺炎などの予防や入院日数の短縮につながる。市内の病院と地域のかかりつけ歯科医が情報共有し、患者の口腔環境を清潔に保つことで術後の速やかな回復改善を図る。

  同大学によると、手術で抵抗力が弱くなると口の中の細菌がチューブを介して肺に入り、感染症や誤嚥性肺炎を起こすことがある。同大学医学部の藤内(とうない)祝(いわい)教授は「口腔の細菌は非常に多く体の中で一番汚い。術後の肺炎の大半は口腔細菌が原因」と話す。

 口腔ケアは歯磨きだけでなく、舌や粘膜の除菌や乾燥防止などの治療を行う。日本歯科医学会の学会誌などのデータでは、口腔ケアを行うことで肺炎の発生率が8ポイント、死亡率が9ポイント低下。心臓血管外科の入院日数が約10日短くなるなど、医療費負担の軽減効果もある。

 協定によると、手術が決まった後、病院の依頼で歯科医が口腔ケアや治療を実施。手術後も歯科医が状況を観察する。歯科医は市内約450人が対象。医療従事者向けの研修も行う。

 藤内教授は「これまで独自に取り組む病院もあったが、医療従事者でも口腔ケアに関する認識に温度差がある。最新の医療知識を発信していく」と説明。市歯科医師会の杉山紀子会長は「これを機に市大を中心とした連携を高め、市民の健康促進につながると考えている」と期待を寄せ、林文子市長は市民への啓発に努める考えを示した。

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