【社説】南スーダン「日報」廃棄 問題の本質は公文書の恣意的な管理だ

 防衛省が「すでに廃棄した」と説明していた南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日々の活動の記録である「日報」が、電子データとして保存されていた。

 日報によれば、首都ジュバで大規模な戦闘が発生した昨年7月、陸上自衛隊派遣部隊の宿営地そばで銃撃戦があり、紛争に巻き込まれかねなかった事実が伝えられている。

 ジャーナリストの布施祐仁さんが情報公開請求をした昨年9月末は、国会でPKO派遣の継続と駆け付け警護など新たな任務の付与についての是非が議論されていた時期で、都合の悪い情報を隠蔽(いんぺい)したと疑われても仕方ない。

 国会では稲田朋美防衛相の日報を巡る答弁を受け野党が辞任を求めており、紛糾が避けられない情勢だ。問題をうやむやにせず、経緯と責任の所在を徹底的に追及してほしい。

 今回の不祥事の本質は、公文書管理のあり方、ルールの恣意(しい)的な運用にある。

 自衛隊の内部資料によると、日報は後々の訓練のための基礎資料として使われる重要な主要教訓資料源とされる。陸上自衛隊文書管理規則では、PKO業務に関する文書の保存期間基準は「3年」と規定されている。だが、備考欄に「随時発生し、短期に目的を終えるもの及び1年以上の保存を要しないものの保存期間は、1年未満とすることができる」と例外記載がある。まさにこの例外が適用され、日報は廃棄された。

 しかし、これでは国民や国会議員が現地の重要な報告である1次資料を精査し、政府の政策決定の妥当性を検証する機会を奪うことになる。特に機密事項を多く扱う防衛省だけに、例外事例が横行するような組織体質を温存させてはならない。公文書を保存管理する厳格な仕組みづくりに取り組むべきだ。

 また、稲田防衛相は日報に記された「戦闘」表現について「事実行為としては武器を使って人を殺傷したり、物を壊す行為はあったが、国際的な武力紛争の一環ではなく、法的意味における戦闘行為ではない」と説明。さらに「憲法9条上問題になるから、『戦闘行為』ではない」旨の答弁をしている。「戦闘」と認定すれば、紛争当事者間の停戦合意などの参加条件を定めたPKO5原則に抵触し、憲法違反となるからだ。

 合憲とするため現状認識をねじ曲げるかのような姿勢に、いったいどれだけの国民が納得するというのか。

© 株式会社神奈川新聞社