地元で悼む声相次ぐ 横須賀ゆかりの佐藤さとるさん死去

 こびとの世界を描いた「コロボックル物語」シリーズで知られ、9日に88歳で亡くなった児童文学作家の佐藤さとるさんは、横須賀市逸見地区で生まれ育ち、故郷を舞台に描いた作品を多く手掛けた。ゆかりのパネル展や原画展を開いてきた地元関係者からは悼む声が上がった。

 14日まで作品の原画展を開催していた絵本専門店「うみべのえほんや ツバメ号」(同市津久井)。13日の佐藤さんの誕生日に合わせて、来場者がメッセージカードを書くコーナーを設けていた。

 店主の伊東ひろみさんは誕生日前日の12日に訃報に接したが、全部で80通ほどになったカードを自宅に送り、佐藤さんの長女から「仏前に供えた」というメールが届いた。「メッセージを読んでもらうことはできなかったけど、先生がどこかで見ていてくれている気がする」と話す。

 昨年10月、市生涯学習センター(同市西逸見町)で行われた市民有志のパネル展で実行委員会代表を務めた上野つね美さん(64)は、長年の大ファン。10年ほど前からは佐藤さんと親交もあった。

 「先生はパネル展には来られなかったけれど、会場の写真を見て、とっても喜んでくれた」と振り返り、「亡くなる前に開催できてよかった」と声を詰まらせた。

 昨年10月に発足した逸見地区の活性化に取り組む市民グループ「コロボックルの会」では、佐藤さんは名誉顧問となった。

 副会長の田口義明さん(69)は「グループの集会所を建設中で、先生のお見舞いに行ったときには、『元気になって見に来て』と言っていただけに残念だ。先生の供養になるように活動をがんばっていきたい」と話した。

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