障害者家族の苦境訴え 「やまゆり園」再建で説明会

【時代の正体取材班=成田 洋樹】46人が殺傷される事件があった障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)の再建構想の検討状況について、県は19日、同園体育館で家族会に説明した。障害者団体などから「大規模施設の再建ではなく、地域での生活を目指すべき」との意見が出されている中、家族からは「地域で暮らすことが難しいから、やまゆり園にたどりついた」として、障害当事者や家族の苦境を訴える声が相次いだ。  この日は家族約100人が出席。県はまず、現在地での大規模施設再建を柱とした構想を巡って障害者団体などから異論が続出したことを踏まえ、策定時期を3月から夏ごろまでに延期した経緯を説明した。

 質疑応答では、男性入所者の母親が、障害を理由に近隣住民から嫌がらせを受けたりするなど在宅生活で苦労を重ねてきた経緯を語った。「地域に密着して暮らすことができないから、やまゆり園に入った。子どもに重い障害がある親は地域の『地』の字も出ない」と訴えると、大きな拍手が寄せられた。

 別の入所者の父親は、施設再建構想の策定が延期され、今後の議論によっては県の建て替え方針が揺らぐことを懸念。「われわれは足元が固まっていない。先が見えないという不安がある」と胸の内を明かした。

 一方で、当初は全面建て替え案に反対で改修での対応を求めていた別の父親はグループホーム(GH)について「やまゆり園並みのサービスが整っているのであれば、GHという案もいいのではないか」と問題提起。横浜知的障害関連施設協議会が横浜市内のGHでの受け入れを表明しており、「現状ではGHについての説明が足りない。県主催の説明会を開いてほしい」と要望した。■「情報発信したい」 家族会の大月和真会長は説明会開会にあたり、「県側から『家族への説明会を報道陣に公開してもいいか』という要請があった。今、家族会は(建て替え問題を巡ってさまざまな意見を受けて)押されている状況ということもあり、公開することにした。家族会として今後も何らかの情報発信をしていきたい」と話した。

 説明会終了後、報道陣の取材に応じた大月会長は「現実をみると、GHで暮らせない人もいるということを分かってほしい。一刻も早く建て替えを」と強調した。

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