まちづくり議論多様 17年度横浜市予算案連載(下)市庁舎移転

 「20年以上懸案だった大事業。しっかり取り組む」。新市庁舎が横浜市中区北仲通地区で8月に着工されるに当たり、林文子市長は年頭会見で作業の順調さをアピールした。

 2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、同年6月に市庁舎移転−。市庁舎の新旧エリアでは活性化に向けたまちの構想作業が進む。17年度当初予算案に73億3200万円を計上した。

 市はJR関内駅前の現庁舎街区について今年1月に事業者向け市場調査を実施。開発、大学、商業観光、建設など29業者が参加した。大学・大学院、国際交流拠点、ホテル、ミュージアム、観光情報発信拠点…。市が掲げる「国際的な産学連携拠点の形成」「観光・集客拠点の形成」をテーマに、業者からさまざまなアイデアが寄せられた。

 市庁舎行政棟は活用を基本とすることに対しては「残した方が関内らしさを維持できる」との好意的な受け止めがある一方、「施設計画上、改造や撤去を認めるべき」という意見もあった。

 市は今年3月に事業実施方針を策定し、18年度に公募する。市議の一人は歴史的な価値も高い現市庁舎の重要性を認めつつ「ICT(情報通信技術)に対応していないし、駐車場のスペースも有効活用できない。民間の柔軟なアイデアを幅広く聞ける機会だから市庁舎を残すのを公募の前提にしない方がいい」と注文を付ける。

 地元住民らにとっても期待は高まる。協同組合伊勢佐木町商店街の牛山裕子理事長は「関内駅前の顔が変わるチャンスと受け止め、100年先を見据えたまちづくりを進めてほしい」と求める。

 一方、移転先の北仲通地区では商業施設や高層マンションの開発も予定されている。新市庁舎はみなとみらい線馬車道駅と直結。JR桜木町駅の新改札口と同地区を結ぶ歩道橋も整備される予定だ。

 新市庁舎低層部は商業・市民利用スペースとして活用される。「観光客も利用できる新子育て拠点」「市民活動を気軽に学べる『まちなか大学』」「船の上でランチ商品を販売」−。横浜市立大学の学生が1月、新市庁舎を「まちなか市役所」と位置づけ、多様なアイデアを市側に発表。市担当者は「新たな都心臨海部の拠点のにぎわいをどう創出するかが課題。参考にしたい」とする。

 だが関内・関外エリア整備を巡り、計画修正を余儀なくされる事態も起きた。「リーディングプロジェクト」(林市長)の横浜文化体育館再整備事業が入札中止となり、当初目指した五輪前のサブアリーナ供用開始が難しくなった。債務負担額も約40億円増額となった。五輪開催を念頭にスケジュールを描くのは新市庁舎整備も同じだ。担当者は「遅れは絶対に許されない。一つのミスも出さない意気込みでやっていく」と気を引き締める。

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