増える自衛隊体験入隊 あり? なし? 自治体職員から疑問の声も

 自治体職員の自衛隊への体験入隊はあり? なし? 職員研修に陸上自衛隊への体験入隊を取り入れる自治体が、県西地域で増えている。重いリュックを背負って行進したり、腕立て伏せをしたり…。「規律を守り、協調性のある職員に」と4町が若手や中堅を厳しい訓練に送り込んでいるが、一部の議会からはその効果に疑問の声も上がっている。

  職員研修の一環として体験入隊を導入しているのは大井、開成、中井、松田の各町。大井が2011年度から、静岡県御殿場市にある陸上自衛隊の駒門駐屯地に若手や中堅を派遣。「効果があるようだ」と、開成(12年度)、中井(13年度)、松田(14年度)が続いた。

 関係者によると、参加者はリュックを背負い、整列して15キロ程度を行進。「右向け、右」などの号令に合わせて基本動作を繰り返し、体力を調べるために腕立て伏せや腹筋、3キロ走などに挑む。研修期間は2泊3日で、4町の計約30人が同じカリキュラムに参加している。

 各町の狙いは何か。「仕事に慣れ、いわゆるホウレンソウ(報告・連絡・相談)がおろそかになるケースがある」とするのは、20〜40代が参加している大井。自分の仕事の仕方を見直してもらいたいと、体験入隊を続ける。

 入庁10年以内が対象の開成は、互いに助け合いながら目的を達成する訓練を通し、「仕事での連携に生かしてほしい」。中井は「整理整頓や身なりを整えるなど、秩序ある態度を身に付けてもらいたい」と1〜3年目の職員を参加させている。また、4町の職員が同じ訓練に参加することで、横のつながりを強めたいとの思惑もある。

 だが、そんな風潮に疑問を呈する声も聞こえ始めた。「職員の研修方法として行き過ぎだ!」。町議会3月定例会が開会した松田町の議場。利根川茂氏(無所属)が異を唱えた。体験入隊の中止を求める利根川氏は「日常生活に役立たず、地方創生や子育て支援など町の施策に生かされない」と首をかしげる。

 これに対し、本山博幸町長は具体的な効果には触れなかったものの、「職員にいろいろ経験させたいというのが私の考え」と答弁。本会議終了後は「研修を終えた職員は何かをつかんで帰ってくる印象がある」と語った。

 新年度について、大井と松田、中井は継続の方針、開成は未定という。

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