【特集】バリアフリーツアーに同行

リオパラ選手と浅草、渋谷巡り

浅草雷門前でガイドの説明を受ける中山和美さんとグリズデイル・バリージョシュアさん
渋谷のスクランブル交差点を車いすでさっそうと駆け抜ける
車いす対応の電話ボックスをチェックする

 車いすを使う外国人観光客のためのガイド付きバリアフリーツアーを旅行会社トリップデザイナー(東京都荒川区、坂元壮社長)が企画、募集を始めた。リオデジャネイロ・パラリンピックの車いす陸上女子の中山和美選手が参加した体験ツアーに同行取材した。行く先々で利用者にとっての課題も見えてきた。

 ▽浅草から神宮まで

 中山さんは1983年生まれの元客室乗務員。2007年に脊髄梗塞のため両足まひとなった。3年後、トラック競技を始め、今では100、200、400、800メートル(女子T53クラス)で日本記録を保持。

 ツアーの仕掛け人の案内人はグリズデイル・バリージョシュアさん。81年、カナダ生まれ。脳性まひのため電動車いすを使用している。英語のウェブサイトで、日本のホテルや観光スポットなどのバリアフリー情報を発信している。

 ツアーは浅草を起点に渋谷を経由して明治神宮まで丸1日の行程だ。雷門向かい側の浅草文化観光センターからスタートした。バリアフリートイレや授乳室を備え、4カ国語(日本語、英語、中国語、韓国語)による観光案内を行っている。

 まずエレベーターで、8階の展望テラスへ。浅草寺や仲見世、雷門が一望…と言いたいのだが、惜しいかな、車いすでの視線と重なって網が張ってあり視界を遮っている。施設は整っていても、細かい気遣いが大切だと気付かせてくれる。

 1階のトイレへ。車いすが入れるように広く、手すりやオストメイト(人工肛門や人工ぼうこうを設けた人たち)向けの機能も付いている。「日本のバリアフリーの素晴らしいのはお手洗い」とグリズデイルさん。中山さんは「背もたれがあった方が楽」と指摘した。

 ▽「PR不足」

 センターを出て雷門へ。記念写真を撮って仲見世を進む。平日だったので人混みはそれほどではなかったが、休日は車いすが進むのに難渋するだろう。

 浅草寺では段差のある本堂にどうやって上がるのかと思っていたら、何と本堂すぐ近くにエレベーターがあった。「施設があってもPR不足ですね」と坂元社長。またグリズデイルさんは「英語の表示がないのが残念」と指摘した。

 中山さんは「浅草寺は初めてで面白かった」と感想を話す。「寺や神社は段差があるイメージなのでバリアフリーになっているのが意外。外国人の友人とまた来たい」

 隅田公園では、土手を上がるスロープが。川辺から眼前に東京スカイツリーが威容を見せる。ここで午前の部は終了。仲見世まで戻り、近くのレストラン「世界カフェ」へ。ここは普通のメニューに加え、イスラム教徒向けのハラルフードなどの料理を提供。店の一角には簡易な礼拝コーナーもある。

 路面店で入り口のアコーディオンドアを大きく開くことができるので、車いすでも容易に出入りできる。ただ、トイレが2階にあることが残念だった。

 渋谷への移動は地下鉄で。浅草駅のエレベーターで地下に行くと、駅員が飛んできて車いすスペースがあるドアの位置まで案内。浅草駅からの連絡で、渋谷駅ではスロープ板を持った駅員が待ち構えている段取りだ。

 ハチ公を見学して、いざスクランブル横断。さっそうと車いすが進み、人波はよけてくれるが、いかんせん青信号の時間が短い。3分の2ぐらい渡ったところで点滅。少しひやひやした。明治通りを歩いて原宿キャットストリートへ。バリアフリー対応の歩道だが、緩やかな上りが続き、中山さんは少し大変そうだ。

 ▽ピンポイントの道

 最後は明治神宮。ここは玉砂利で、車いすが進むのは大変だろうと思っていたが、参道の両サイドが昨秋、石敷きになり、とても順調に車いすが進む。本殿にもスロープで進むことができ、バリアフリーが格段に進化した。

 ツアーは確かに順調だった。だが、ピンポイントのこの同じ道でしかバリアフリーツアーは成立しないのが問題だ。一歩、道を外れればどんなバリアーが潜んでいるか分からない。「将来的にはコースを増やしたい」と坂元社長。あくまでも前向きな姿勢だ。

 中山さんは「設備は日本の方が整っているが、リオなどでは気軽に声を掛けてくれる。日本では助けていいのか悪いのか迷っている時間が長い」と日本人の引っ込み思案さを指摘。「寺社の手水舎(ちょうずや)が車いすでは届かないので低くしてもいいのでは」と提言していた。

 さらにツアーについて「距離はそれほどでもないが坂が多かった。ペースはちょうど良かった。海外の友達も連れて行きたい」と話していた。

 グリズデイルさんは「外国人も日本の名所を見てみたい。おもてなしの心を大切にしてツアーを拡充していきたい」と抱負を語った。

 ツアー料金は重度訪問介護従業者の資格を持つ英語ガイドがついて1人1万4000円。(共同通信=中村彰)

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