【コラム・天風録】球春本番入り

 <試合には流れがある/流れのきっかけは小さく/結果は大きい>。大の高校野球ファンだった阿久悠さんの詩集「甲子園の詩」にある。豪快なホームランに目を奪われがちだが、小さな流れにこだわる試合も捨てたものではないという▲亡くなって10年になる阿久さんも空の上から好試合を楽しんだに違いない。きのうのセンバツ開幕戦である。地元勢の呉が初陣を飾った。互いに盗塁やスクイズできっちり1点を取り合った展開の末、延長戦を制した▲追い付き、追い越し、追い越される接戦だった。どちらが小さな流れをつかんでもおかしくはなかった。<好試合とは/集中心の継続くらべ(中略)そして チャンスの女神は/集中心に対して必ず応じてくれる>とも阿久さんは記す▲集中して耐えて粘った。最後に勝利の女神がほほ笑んでくれたのだろう。憧れの晴れ舞台に初めて立ち、価値ある勝利を収めた。「イチクレ」の歴史に新しいページが加わったのは間違いない。次の1勝に期待したい▲センバツ開幕で、心浮き立つ球春も本番入りである。WBCで2大会ぶりの優勝を狙う日本代表、33年ぶりの日本一に挑む広島東洋カープの活躍も楽しみでならない。

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