一番目立ったのは「地獄先生」 「チア☆ダン」

 せっかくタイトルを「チア☆ダン」と縮めたのに「女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」と長たらしい副題が付く。

 福井の県立高校に通うひかり(広瀬すず)=写真中央=は、サッカー部員の孝介(真剣佑)を応援したいがために、チアダンス部に入った。うまい子もいるが、ひかりをはじめ全体のレベルと意識は低い。

 そこへ登場、鬼の顧問・早乙女薫子(天海祐希)。スカートの丈から髪形まで鉄の規律を定めて、ひかりたちを鍛えようとする。ほかに中条あやみ、「東宝シンデレラ」出身の山崎紘菜ら。監督は河合勇人。

 自他ともに認めるだめな生徒が、周囲を驚かせる大活躍−というのは青春映画の常道。人物にどんな個性を与えるかがポイントになる。

 「地獄先生」と呼ばれる早乙女が檄(げき)を飛ばせば稲妻が光り、カミナリが響きわたる劇画調、時に「Shall we ダンス?」を思わせるミュージカル風。

 地獄先生は「福井で埋もれていていいの? だって、福井だよ」と挑発する。地元の協力が欠かせない映画作りのなかで大胆なせりふを言わせたものだが、ひかりたちは「行こっさ、アメリカ」と奮い立つ。

 頂点の全米大会。サンディエゴで撮影した熱気に高揚感はあるが、ひかりたちの躍動をもっとたっぷり見たかった。映画の観客は、度々挿入される観衆や現地アナウンサーの興奮ぶりよりも、ダンスそのものに感動したいのだ。

 地獄先生、実はつらい過去を背負っていてラストで泣かせる。結局、一番目立ったのは彼女でした。キラキラした広瀬と対照的に、笑顔が苦手な長身の山崎も印象に残る。

 2時間1分。横浜ブルク13、川崎・チネチッタほかで上映中。

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