田澤純一が明かす元中日チェンの意外な記録、マーリンズ監督の意外な一面

メジャー9年目の今季からマーリンズに移籍した田澤純一投手。2009年から8年を過ごしたレッドソックスでは、トミー・ジョン手術を経験しながら傘下2Aからメジャーまで這い上がり、2013年には守護神だった上原浩治投手(現カブス)と共に大車輪の働きで、ワールドシリーズ優勝に大きく貢献した。

新天地になじむ田澤、背番号「25」を選んだ理由とは

 メジャー9年目の今季からマーリンズに移籍した田澤純一投手。2009年から8年を過ごしたレッドソックスでは、トミー・ジョン手術を経験しながら傘下2Aからメジャーまで這い上がり、2013年には守護神だった上原浩治投手(現カブス)と共に大車輪の働きで、ワールドシリーズ優勝に大きく貢献した。

 信頼できる救援投手としてメジャーに定着した右腕が、現地から生の声をお届けする連載コラム。第2回は、新しいチームメイトや監督の素顔、そして背番号25を選んだ理由についてリポートしてくれた。

———————————————

 マーリンズの田澤純一です。前回から始まったコラム、楽しんでいただけましたか? 開幕まで10日を切り、2月14日から始まったスプリングトレーニングも、いよいよ終盤です。

 終わりに近づいてきたスプリングトレーニングでは、怪我なく自分のペースで調整ができています。現時点でメジャーのオープン戦は4試合で登板しました。マイナーの試合でも投げているので実戦登板の数は少なくないと思います。自分の中ではよかったり悪かったりありますが、オープン戦では無失点。もちろん、結果や内容も大事ですが、今年は何より「なじむこと」を大切にしています。

元中日チェンが今季打撃に励む理由、避けたい“記録”とは…

 チームが変われば、当然キャッチャーも変わります。僕がどんな組み立てで投げたいのか、逆にキャッチャーがどんな配球が好きなのか。その辺りをお互い確認できていると投げやすさは増します。僕は基本的に初めて組むキャッチャーにはリードを任せるようにしています。特に、ナ・リーグは初めてなので、自分の中に打者のデータがほとんどない。最初のオープン戦で組んだ(AJ)エリスはナ・リーグが長く、打者についてアドバイスをくれる予定だったのに、怪我をして別メニュー調整になってしまいました。早く戻ってきてほしいです。

 正捕手のリアルミュートとは、どういう巡り合わせか、ライブBP(フリー打撃登板)を含めて、まだ一度も組んだことがないんです。仲が悪いわけじゃないですよ(笑)。クラブハウスでは声を掛けてくれたり、すごくいい人です。チームメイトは、みんな本当にいい人ばかり。チェン(・ウェイン)さんと一緒にいることが多いんですが、最近は(マルセロ・)オズナや(エディンソン・)ボルケスも加わってきます。この2人、ホントに面白いんですよ(笑)。今度詳しく紹介しますね。正直、キャンプイン当初は多少不安もあったけど、非常にやりやすいチームで本当によかったです。

 チェンさんは相変わらずいい人で、いろいろなアドバイスをくれます。今、チェンさんと一緒に頑張っているのがバントの練習。大分うまくなりました! チェンさん、今年はバッティングにも力を入れています。というのも、実はまだメジャーでヒットがゼロ。50打数ノーヒットで、レスター(カブス)が持つ66打数無安打というメジャー最長記録に近づいているんです。記録更新だけは避けたいと必死です(笑)。今年こそメジャー初ヒットが出るように、皆さんも応援して下さい!

昨季マーリンズで「25」をつけていた人物とは…

 この春、マーリンズには練習がない休養日が3日もありました。レッドソックスはキャンプ中に休みが1日しかなかったから、「え、こんなに休んでいいの?」って(笑)。レッドソックスではキャンプが始まる時に監督やコーチと面接をして、オープン戦は何試合に投げて、こういう形で仕上げていこうって話し合うんですけど、マーリンズは選手の自主性に任せる感じで、その時の状態に合わせて登板スケジュールが伝えられます。どちらがいいというわけではなく、球団によっていろいろなやり方があるんですね。移籍して初めて知りました。新鮮です(笑)。

 こういう大らかな雰囲気は、マッティングリー監督の人柄からくるものかもしれません。現役時代はヤンキース一筋でMVP(1985年)も獲ったスーパースター。なのに、全然偉そうな雰囲気はなくて、試合中のダグアウトでもイライラする様子はまったくありません。試合でミスがあったとしても、その場で怒るタイプじゃなくて、次の日の練習で「昨日の試合はこういうミスがあったけど、こう修正していこう」と話して、プレーを確認する感じ。選手ともいい距離感を保っていて、クラブハウスに置いてある卓球台で一緒に遊ぶこともあるし、監督室でリラックスしていることもあるし、決してベッタリと近すぎる感じではありません。まさに、大らかな雰囲気を持った監督です。

 最後に、日本の方によく聞かれる質問に答えておきますね。背番号「25」を選んだ理由です。去年マーリンズの「25」といえば、打撃コーチだったバリー・ボンズ。あの偉大なホームランバッターの番号を引き継ぐ形になってしまいました(笑)。本当は自分のラッキーナンバーでもある「35」を選ぼうと思っていたらフェルプスがつけていたので、「5」の入った近い番号で空いていたのが「25」だったんです。何の気なしに「25」を選んだ後で、「あ、そういえばボンズの番号だ」って気付きました(笑)。ジャイアンツの「25」というイメージが、あまりに強いので。同じ番号を付けることを光栄に思いながら、頑張りたいと思います!

 開幕まであとわずか。万全の準備を整えて、いいスタートを切りたいと思います。次回は開幕後にリポートしますね。

マイアミ・マーリンズ 田澤純一●文 text by Junichi Tazawa

© 株式会社Creative2