大越工業、独自技術で金を高効率回収 日大と連携、試作機製作

金属スクラップ材リサイクルの大越工業(本社・福島県須賀川市、社長・大越幸男氏)は、希少金属の新たな高効率リサイクルに取り組んでいる。同社オリジナル技術を用いて、金メッキ基板から金を分離回収するというもの。郡山市にある日本大学工学部の出村克宣工学部長との産学連携をベースに現在は試作機段階だが、既存の希少金属回収技術である精錬鉱山方式と湿式イオン化溶出回収方式を補完する手法として、トータル回収率の向上を図りながら実用化を目指す。

オリジナル技術の流動応力分離選別装置

 同社はこれまでに独自の希少金属選別回収技術として、流動応力(歪み波動)とネオジムリニアドライブを開発している。流動応力は流動学理論に基づき、相対する線接応力(パルス波)と法接応力(正弦波)を高速回転させたディスクによって発生させ、その2波のエネルギーで複合物質を組成物ごとに分離するもの。また、ネオジムリニアドライブは、強磁力のネオジム磁石を用いて発生させた電流で組成ごとに分離する技術。この2つを組み合わせ、カーボン付き基板や紙付きジュメット線やPCメインチップ、アルミ付Au端子基盤など複合素材原料から効率的に希少金属類を選別回収している。

 現在、研究開発中なのは水道水と塩化ナトリウムで作った電解溶液を水槽に入れ、その中に金メッキ基板を投入し、前述の2つの技術を水槽内で同時発生させ、基板から金メッキ部のみを剥離回収するというもの。3分の1スケールのプロト装置で実証を重ねた結果、基板から金メッキ部が剥離し、最終的に金含有率95%の金箔を回収することができた。

 現在は各企業からサンプル商材の提供を受けながら回収率の向上に努めている段階。同社の駒形成美専務取締役は「企業から排出される都市鉱山(雑品)から高付加価値利益を生み出す分離選別リサイクル技術として共有したい。国内で完結する全部再資源化リサイクル循環の一つの機能を担えるまでに成長できれば」と話している。

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