57歳主婦、夫が病気退職。65歳までどう家計を支える?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、年金支給までの生活費に悩む56歳の契約社員の方。ファイナンシャル・プランナーの八ツ井慶子さんが担当します。

年金支給の65歳まで生活していけるか不安です……

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、年金支給までの生活費に悩む57歳の契約社員の方。ファイナンシャル・プランナーの八ツ井慶子さんが担当します。

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相談者

Tさん(仮名)

女性/契約社員/57歳

東京都/持ち家マンション

家族構成

夫(56歳/無職)、子ども1人(29歳/会社員 ※独立)

相談内容

主人が病気になり退職しました。傷病手当金も失業保険もすでに終わっています。今後、私だけの収入で、どうやって年金支給年齢まで生活をしていけばいいのかわかりません。私の定年はたぶん60歳ですが、その後もできる限り長く働きたいと考えています。

家計収支データ

Tさんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)ボーナスの使いみち(昨年例)

旅行20万円、車税金と車検代の積立5万円、夫婦こづかい8万円、生活費の赤字補填10万円、貯蓄2万円、固定資産税の不足分5万円

※ただし、企業の実績で額は大きく変わる

(2)「保険料2万円」の内訳

夫・妻/医療保険=保険料7500円(2人で。60歳から半額/アフラック)

夫/生命保険=保険料3500円(58歳で払込終了/日本生命)

妻/個人年金保険=保険料9000円(59歳で払込終了)

(3)車両費「2000円」について

ほとんど乗らないため、ガソリン代が2000円くらい

(4)夫が勤務している頃の収入

月収(手取り)47万円、ボーナスなし

(5)夫の今後について

社会復帰は可能とのこと。現在、求職中ながらなかなかみつからない。

(6)夫婦の年金について

夫/60歳から企業年金(月額)1万4000円,63歳から企業年金と厚生年金一部合計(月額)10万円、65歳から企業年金と厚生年金合計(月額)17万円支給予定

妻/60歳から年金(月額)5万円で65歳から約10万円の予定

FP八ツ井慶子からの3つのアドバイス

アドバイス1 年金支給までのキャッシュフロー表を作ろう

アドバイス2 その支出は本当に必要なのかを再確認

アドバイス3 気を付けたい「収入の落差」によるストレス

アドバイス1 年金支給までのキャッシュフロー表を作ろう

ご相談者のTさんが心配されている「どうやって年金支給年齢まで生活していけばいいか」については、確かにそこが今後のライフプランの大きなポイントになりそうです。いただいたデータによると、Tさんが65歳のとき、ご主人と合わせて受け取る年金は月額20万円、66歳以降は27万円ということになります。一方、現在の生活費は月額で22万円。ボーナスもほぼ貯蓄には回っていませんから、実質の生活費は26万円。それでも数字上は、66歳以降は今の生活が維持できるとういうことになります。

では、それまでのおよそ9年間をどうするか。ご主人が就職できれば世帯収入がアップしますが、できない場合を想定しておく必要はあります。加えて、Tさん自身、現在の職場の定年は60歳。それ以降も働かれるとのことですが、収入ダウンの可能性は高いでしょう。そう考えると、とくに61歳~64歳は家計がきびしいと予想されます。

まずは、今後のキャッシュフロー表を作成してみましょう。インターネットで調べれば、その作り方等は出ていますが、そう難しく考える必要はありません。収入や生活費を年ごとに出して、貯蓄も含めた資産がどう変化していくかを把握できればいいのです。数値が不明な部分は推測でかまいません。もっとも怖いのは、そういう把握ができず、気が付いたら家計は赤字続きで、貯蓄も大きく目減りしていた、という事態に陥ること。不安に思うだけでは家計は何も変わりません。将来予測をして、その上で具体的な対策を検討していきましょう。

アドバイス2 その支出は本当に必要なのかを再確認

現在、ほぼ家計から貯蓄はできていません。そして今後、少なくとも65歳までは収入ダウンが予想されるなら、支出を見直すことが最重要課題です。実際の家計支出の内訳を見ますと、目につくのは「家族のこづかい」と「雑費」。これだけで月9万円。収入の4割を占めています。また、こづかいはボーナスからも8万円使われていますので、年間80万円もこづかいで消費していることになります。この中身を精査してみてください。もちろん、中には必要な支出もあるでしょう。と同時に、コストが抑えられる支出もきっとあるはずです。

もうひとつ、「普段ほとんど使わない」と言われているクルマ。手放すことも検討されては。ガソリン代はかからなくとも、車検や税金、保険と維持費は発生します。都内にお住まいですから、交通機関もさほど不便はないのでは。ときどきタクシーを利用しても、クルマを所有するより安上がりではないでしょうか。

家計の見直しは簡単ではないかもしれません。しかし、それはTさん自身の努力や工夫で解決できる、それだけでも幸運と言えます。自分で自分の首をしめているとしたら、こんなにもったいないことはありません。自分の力ではどうしようもない家計も世の中にはあるのですから。

アドバイス3 気を付けたい「収入の落差」によるストレス

実は、Tさんのようなケースは、収入がダウンした家計によく見られます。ここで注意したいのは、何かしらのストレスを生んでいないかということです。現在、世帯の収入は手取りで22万円。この金額が、アップしての数字なのか、下がってこの数字なのか、その違いや落差で「幸福度」がまったく違うからです。

Tさんのご主人は社会人時代、月収が手取りで47万円だったわけですから、仮にTさんが専業主婦だったとしても、大きな収入ダウンを経験されたことでしょう。それでなくとも、ご主人は病気による退職。当然、将来が不安になります。そういったことがストレスを生むのです。

現在の支出は、ご主人が働いているときであれば何の問題もありません。しかし、今はギリギリです。それでも支出が減らないのは、もしかしたら、モノを買うことでストレスを発散しているのかもしれません。だとすれば、家計にとっては悪循環です。ぜひ、違う形でストレスを取り除くようにしてください。

現状はきびしいですが、Tさんにとっての安心材料もあります。ひとつは、貯蓄が1200万円とまとまってあること。将来の医療費や介護費用、あるいはリフォーム費用としても心強いですが、生活費がどうしても苦しいときにも使えます。もうひとつは、住宅ローンが完済していること。住む場所も確保されているのはもちろん、そのコストが定年後も抑えられるというのは老後生活には大きなプラスです。

Tさんは「私だけの収入では不安」と書かれてありました。しかし、ボーナスも含めると、年収は手取りで314万円。十分高いほうです。将来手にする年金額も決して低くありません。したがって、現状を後ろ向きに考えず、あるお金をどう振り分けたらいいのかと前向きにとらえ、今は少しでも貯蓄できる家計を目指しましょう。

教えてくれたのは……八ツ井慶子さん

ファイナンシャル・プランナー。大学卒業後大手信用金庫に入庫。本当にお客様にとっていいものを勧められる立場になりたいとの思いから、個人相談が中心のファイナンシャル・プランナーとして独立。近著に『ムダづかい女子が幸せになる38のルール』(かんき出版)と『サラリーマン家庭は"増税破産"する! 』(角川oneテーマ21)がある。テレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。All Aboutマネーのガイドを務める

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ

(文:あるじゃん 編集部)

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