52歳会社員。ローンを5本抱え老後資金づくりに不安

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、マンションの売却に悩む50代の女性会社員の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんが担当します。

空き家となっているマンション、売却すべき!?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、マンションの売却に悩む50代の女性会社員の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんが担当します。

※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料になります)。

https://sec.allabout.co.jp/post-form/form/22

相談者

Nさん(仮名)

女性/団体職員/52歳

埼玉県/持ち家一戸建て

家族構成

夫(41歳/会社員)

相談内容

マンションと家の住宅ローンと、奨学金の返済をしていますが、そろそろ老後の資金作りを考えたいと思っています。また、現在空き家になっているマンションの維持をこれからどうしたらよいかと、悩んでいるところ。夫が何も保険に入っていないのも心配です。どのようなものに加入すればいいでしょうか。

家計収支データ

Nさんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)ボーナスの使いみち

貯蓄60万円、旅行15万円、自動車ローン6万円、生活費の補てん約30万円

(2)マンションと一戸建ての住宅ローンについて

・一戸建て(自宅)

平成17年購入、返済額12万円、35年返済10年固定(今年見直し)、ローン残高2670万円(ローン名義/夫)

・マンション

平成11年購入、返済額3万円、25年返済・変動金利、他にマンション管理費1万7000円

(3)所有しているマンションについて

現在、7年ほど空き家のまま。その前は3年間、家賃5万円で人に貸していた。5階建ての5階。エレベーターなし。駅からバスまたは自転車で10分。現在、売値は購入時の半分。

(4)「保険料1万2000円」の内訳を以下の例をご参考に教えてください。

・妻/医療保険(保険期間終身・終身払い、入院7000円、先進医療特約)=毎月の保険料6700円

・妻/がん保険(保険期間終身・終身払い)=毎月の保険料3300円

・妻/傷害保険=保険料2000円

(5)クルマのローンについて

毎月2万円/ボーナスで年間6万円返済、借入額200万円、金利1.5%、完済は平成36年9月

(6)奨学金について

・大学編入時/借入額280万円(平成23年より返済・金利1.3%)=月返済額 1万9000円

・大学専攻科/借入額150万円(返済23年より返済・金利1.5%)=月返済額 1万2000円

ともに終了返済年齢63歳

(7)貯蓄について

基本的には年間120万円ほど貯まっているとのこと。今後の支出としては自宅外壁工事と自費診療による治療で200万円ほどを予定。

FP深野康彦からの3つのアドバイス

アドバイス1 十分な家計管理で、支出内容の把握を

アドバイス2 「借り入れ体質」から脱却しよう

アドバイス3 マンションは売却して身軽に

アドバイス1 十分な家計管理で、支出内容の把握を

相談者であるNさんの家計を拝見すると、月間の収入が56万円に対して支出は約40万円ですから、毎月16万円貯蓄できることになります。ボーナスからは60万円貯蓄しているとのことですから、計算上は252万円貯蓄できていることになります。

しかし、ご本人のコメントは「年間120万円くらい貯蓄できていると思う」とのこと。金額として、倍以上の差があります。まずはここを精査すべきでしょう。おそらく、本人が意識していない支出(=家計データに含まれていない支出)がまだあると考えられます。貯蓄ペースが高いのに貯蓄残高がそれに比例して高くないのも、そこが原因かもしれません。面倒でも、毎月何にどれだけ支出したのか、そして年間ではどのくらいの支出額になるか。それをしっかり認識することから着手してください。

老後資金づくりを始めたいとのことですが、まずは足元の家計管理を十分に行わなければ、それに向けたマネープランが確実性の低いものになってしまいます。まずは支出の現状を把握してみてください。

アドバイス2 「借り入れ体質」から脱却しよう

もうひとつ、Nさんの家計で気になる点があります。それは、借り入れが多いということ。住宅ローンが2本、奨学金が2本、そして自動車ローンが1本。これで計5本です。世帯年収は手取りで800万円。家計にはかなり余裕があるはずです。だからこそ、複数のローンを抱えても十分貯蓄できるわけですが、怖いのは安易にローンを組んでしまう、いわば「借り入れ体質」になること。ローンの支払いは固定費です。何かしらの理由で収入が落ち込んでも、その支払い額は変わりません。将来的に家計を大いに圧迫し、老後資金を取り崩すとこにもなりかねません。

そこで提案ですが、自動車ローンは繰上返済で完済してしまってはどうでしょう。本気で貯めれば、1~2年後にも可能なはず。得をする支払い利息はそう高くありませんが、ローンを1本減らす意味は大きいと思います。

アドバイス3 マンションは売却して身軽に

悩まれているマンションについてですが、すでに7年間、住むことも人に貸すこともなく、つまりは空き家状態。しかし、その間も住宅ローンと管理費が発生し、固定資産税も発生する。トータルの年間コストは60万円を超えます。しかも、物件そのものは年々老朽化しているわけです。

今後、そのマンションを使う予定がないのなら、売却すべきだと思います。売値は購入時の半分とのこと。それも仕方がないことです。仮に売値がローン残高を下回ったら、不足分は今の貯蓄から捻出してもいい。意味もなく所有するより、なるべく早く売却して、固定支出=住宅コストを軽減する方がずっと賢明です。

また、家計管理がしっかりして、貯蓄ペースがさらに上がれば、奨学金の繰上返済も無理ではありません。その結果、一時的に手元の資金は減りますが、ローンが減っていくことに比例して家計はより貯めやすい状態になります。そうすれば、おのずと老後資金も貯まっていくはず。収入があるうちに、身軽になることがとても大事です。

最後にご主人の保険ですが、大きい保障は必要ありません。共働きでお子さんがいないということは、経済的に支える家族がいないということ。掛け金2000円程度の共済か、あるいは単体の医療保険で入院5000円の医療保障を確保すれば十分でしょう。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ

(文:あるじゃん 編集部)

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