50歳貯金1200万円。子ども3人の学費と老後資金が心配

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、教育資金と老後資金に悩む50代の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします

60~65歳の生活資金に不安があります

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、教育資金と老後資金に悩む50代の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

やえざくらさん(仮名)

女性/パート/50歳

東京都/持ち家・一戸建て

家族構成

夫(会社員/51歳)、子ども3人(高1・中・小5)

相談内容(原文まま)

子ども3人の教育費はちゃんと出せるか、その上で贅沢でなくてもいいけれども老後の生活費は確保できでいるか。とくに60歳から65歳の間の5年間に不安があります。よろしくお願いいたします。また、主人の会社はDC確定拠出年金制度を導入しています。その残高がいま1500万円ほどありますが、これは年金の原資になるのでしょうか?退職一時金になるのでしょうか?ちなみに、定期預金は子どもの名義で、教育資金のためのものです。

家計収支データ

「やえざくら」さんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)ボーナスの使いみち

夫小遣い60万円、学資保険51万円、学費100万円、固定資産税、自動車税など20万円、その他レジャーなど

(2)家族の小遣いの内訳

夫8万円、妻2万円、子ども3人にそれぞれ1万円、5000円、2000円

(3)収支について

毎月8万7000円貯蓄となっているが、うち4万7000円は結果的に貯められず、

何かしら支出で消えているため、毎月の貯蓄は実質3万7000円ということになる。

(4)加入保険の内訳

[夫]

・個人年金保険(65歳から10年確定、年金額77万円)=保険料9000円

・終身保険(死亡保障116万円75歳以降介護保障に切り替え可能、収入保障特約75歳まで2860万円、災害補償特約、医療特約入院1万円、他)=保険料2万7963円

[妻]

・個人年金保険(60歳から終身、年金額70万円)=保険料52歳まで前納。以降60歳まで12万6098円(※年払い)

・共済1(病気死亡保障300万円、病気入院1万円、他に女性疾病特約)=保険料4000円

・共済2(病気死亡保障300万円、がん診断給付金100万円、がん入院1万円)=保険料1700円

[子ども]

・1番上の子/学資保険(17歳満期、満期金240万円)=保険料13万7004円(※年払い)

・真ん中の子/学資保険(17歳満期、満期金320万円)=保険料9万9660円(※半年払い)

・下の子/学資保険(17歳満期、満期金320万円)=保険料8万6900円(※半年払い)

・1番上の子/学資補償保険(掛け捨てタイプ、扶養者に万が一のことがあった場合に学資費用年額55万円、進学費用100万円、22歳まで補償)=保険料1040円

・真ん中の子/学資補償保険(掛け捨てタイプ、扶養者に万が一のことがあった場合に学資費用年額55万円、進学費用100万円、22歳まで補償)=保険料1290円

・子ども全員/共済(病気死亡100万円、入院6000円、他)=保険料1000円×3人分

(5)子どもの進路について

親としては自宅から通える範囲の国公立大学あるいは私立文系を考えているが、上の子は地方国立理系学部を希望している。

(6)住宅ローンについて

物件価格1520万円(新築一戸建て)

全額借入額、完済2022年12月(繰上返済で3年短縮)

10年固定金利1.4%

(7)公的年金について

夫/65歳から年額240万円

妻/65歳から年額100万円

FP深野康彦からの3つのアドバイス

アドバイス1 学資保険と貯蓄で教育資金は用意可能

アドバイス2 今の生活を続ければ80歳前に貯蓄はなくなる

アドバイス3 今から生活費をダウンサイジングしていく

アドバイス1 学資保険と貯蓄で教育資金は用意可能

まず教育費ですが、結論から先に言えば、そう心配は要りません。具体的に試算してみましょう。

一番上の子が志望されている国公立は、4年間にかかる学費はおよそ250万円。下の2人の方がともに私立文系とすると、かかる学費は平均390万円ですから、2人で780万円。合計1030万円用意できれば、大学費用はカバーできるということになります。

加入されている学資保険3本の満期金の合計は880万円。これ以外に、お子さん用の定期預金が780万円。合わせて教育資金は1660万円ありますから、学費については当然、問題ありません。仮に、地方大学に進学した場合、生活費として仕送りが発生します。どの程度、仕送りをするのかは各世帯によって様々ですが、目安となる平均額は月8万~9万円。年間100万円とすると4年間で400万円。これも先の教育資金から捻出できるでしょう。教科書代や通学費等もそこからまかなえるはずです。

アドバイス2 今の生活を続ければ80歳前に貯蓄はなくなる

次にご夫婦の老後資金ですが、ご主人、奥様とも60歳以降も働かれるかどうかが不明ですが、働かない=リタイアとして考えてみます。

ご主人が60歳の定年時にどれだけ老後に回せる資産があるでしょうか。貯蓄として毎月3万7000円は確実に貯められているので、これが定年まで続けば約400万円。お子さん名義の定期預金以外の貯蓄が現在380万円ほどですから、定年時には780万円貯まっています。また、住宅ローンはあと6年で完済ですから、その後、その分を貯蓄に回せば約450万円、学資保険の保険料支払いも順次終了し、それも貯めることができれば約200万円。さらにボーナスから捻出(年間100万円)している真ん中の子の学費が高校卒業で終わり、その後は同様に貯蓄に回せば、実際は定年までに1830万円まで貯められるという計算になります。

確定拠出年金(以下DC)は、毎月いくら会社側から拠出されているかが不明ですが、51歳ですでに1500万円になっているとのことですから、定年時には2000万円程度と考えられます。ちなみに、DCは原則60歳以降に年金のように受けとることも一時金として受け取ることも可能です。前者は雑所得、後者は退職所得となりますが、それぞれ公的年金等控除、退職所得控除が適用されます。これもまたDCのメリットです。

その他の老後資金としては個人年金保険があります。ご主人が770万円、奥様は終身タイプなので90歳まで生きたとして2100万円。これに先の貯蓄とDCを加算すると6700万円ということになります。

ご心配のご主人60~65歳になるまでの5年間ですが、生活水準を今と変えず、今の生活費から不要となる支出(教育費、住宅ローンなど)を差し引くと、年間で482万円(月31万円、それ以外にボーナスから捻出していた110万円)。これに社会保険料や税金を加算して、ざっくりとですが540万円とします。5年間で2700万円となりますから、先の6700万円を差し引けば、65歳の時点で資金残高は4000万円。公的年金は夫婦合計で340万円とのことですので、仮に65歳以降も年間コストが540万円とすると、毎年200万円の赤字となります。結果、老後資金は85歳で底をつくことになります。長生きするリスクを考えると、生活費を是正する必要性はあるでしょう。

アドバイス3 今から生活費をダウンサイジングしていく

では、毎月の生活費をどの程度に抑えれば、安心でしょうか。

用意できる老後資金は6700万円。このうち、予備費(長生きリスクの備えや医療、介護費用)として1000万円を差し引けば5700万円。一方、公的年金は25年間受給すると合計8500万円となり、先の資金と合算すると1億4200万円。これを30年間(60~90歳)で月割りすると、約39万5000円。税金と社会保険料を差し引けば、およそ35~36万円に生活費を抑えることが老後の生活費の目安となるわけです。

そうなると、当然、生活コストをダウンサイジングする必要が出てきます。お子さんにかかる費用を差し引いても、今より少なくとも年間100万円は生活費を下げなくてはいけません。60歳になった時点で、急に切り替えるのは簡単ではないはずです。今から少しずつ、生活費を削減していくことが賢明でしょう。

まず、相談文にもあるように、本人が把握していない支出がありそうです。家計支出をしっかり整理してください。

削るべき支出はあくまで各世帯の優先順位となりますが、明らかに不要と思えるのが学資補償保険とお子さんの共済。奥様の共済も1本に絞るべきです。保険料の割高なご主人の終身保険も、貯蓄は今後十分にできますので、あえて終身で死亡保障を確保する必要性を感じません。介護費用も貯蓄から捻出できます。これは払済保険にして、新たに10年定期で死亡保障2000万円を確保し、医療保障も入院5000円の掛け捨てタイプに加入すればいいでしょう。こういった保険の見直しで、毎月2万円は確実に保険料コストが下がります。

また、ご主人の小遣いも目立ちます。毎月8万円にボーナスから60万円。合計、年間156万円にもなります。確かに、収入も十分高いので、それだけもらっても、お子さん3人の教育資金も用意ができ、住宅ローンも支払えています。その意味で、その額も決して高くはないと言えるのかもしれません。

しかし、それは現役時代の話です。老後も続ければ、先に試算したように貯蓄を76歳で使い果たします。徐々に減らすか、60歳から大きく削るか。どちらにしてもここの削減が必須だということは認識しておくべくきです。

もうひとつ。60歳以降、少なくとも年金の受給開始となる65歳までは働くこと。奥様もできる限りパートを続ける。金額は少なくとも収入が継続的にある。そのことが、もっとも効果的な老後対策なのです。

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教えてくれたのは…… 

深野 康彦さん

業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ

(文:あるじゃん 編集部)

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