「家計の苦しい人」が物を捨てられない理由

片付けは、お金や家計、人生と多くの関連があることはご存知でしょうか? なぜ片付かないのか?なぜ捨てられないのか?を、「お金」や「家計」という面から考えてみました

家計が苦しい人のリビングに溢れる物とは

物が多い人は、「買って手に入れること」や「保有すること」で安心や満足を得る傾向があります。常に何かを買って手に入れていれば、お金は当然減り、家の中は物で溢れてしまいます。

家は立派なのに、家計が苦しいというお宅に伺うと、健康器具や楽器、流行の電化製品、便利グッズといった物がリビングに溢れています。家計は苦しいのに、便利だから、健康に良いから、教育に良いから、いつか使うからと、次から次へと買い込み、そうした習慣が家計を苦しめていることに気付きません。さらに、どこに収納したかさえわからなくなってしまい、しまいには、同じ物をまた買ってきてしまう。

物を買えばお金は減りますので、節約や貯蓄と家計管理をしっかりしたいという場合は、この消費行動を見直し、同時に自宅に溢れている物を捨てて片付けることが大切です。

極端に物をためこむ人、ミニマリストに走る人、幸せ度は高い?

団塊世代の消費行動とは

団塊世代の多くは、物不足やオイルショックといった経験から、安い時に買って貯め込む習慣がついています。また、高度成長期の豊かな時代も知っているので、お金を使うことに抵抗も少ないのが特徴です。結果的に多額のお金を使って、自宅を物だらけにしてしまっているのです。

団塊ジュニアの苦労

その団塊ジュニア達は、そのような親を見て育っているので、親と同じような消費行動を取るのが一般的です。しかし、高度経済成長を経験した親世代とは違い、収入は増えない、家は狭い……と親とは違う環境の中では、親より苦労するのは目に見えています。そのような団塊世代の親の住んでいる自宅が物に溢れて、実家の片付けに苦労している団塊ジュニアも少なくないでしょう。

このように物を持ちすぎる親を反面教師にしてしまうのが、ミニマリスト(持ち物をできるだけ減らし、必要最小限の物だけで暮らす人)です。お金のことでいうと、浪費家やギャンブル癖のある親を持つと、子どもはそれらを反面教師とし、過度な節約家や貯め込み型、いわゆる「ケチ」と呼ばれる人になるのと同じです。

物を持ち過ぎている人もミニマリストも、どちらも極端すぎて、そこに本当の「幸せ」があるのかどうかは疑問です。大切なことは、足るを知ったうえで自分と家族にとって「良い加減」を知ることです。

高かった物も使わなければ価値がない

「捨てられない」理由は、「捨てる=損をする」という想いが背景にあります。100均で手に入れた物は捨てることに抵抗が少ないのに対し、高かった物ほど、もったいないと感じ、損するような気持ちになってしまうから、捨てられません。

しかし、どんなに高かった商品でも、使わなければ、その物の価値はゼロに値します。物の価値は使ってこそ高まるのです。買った値段以上に使いこなすことができれば、物の価値は2倍にも3倍にもなります。

「買って手に入れること」や「保有すること」で安心や満足を得て、実際はその物を使わない、数回使ってしまい込む、という場合、買い物依存症や心の問題として内面を見つめることが優先になるでしょう。心の隙間を埋めるように買い物をしていたら、心も家計も貧しくなる一方です。

もう一度手に入れることができる自分に!

他にも、「もう2度と手に入れることができないかもしれない」と思うと、捨てることをためらってしまうでしょう。つまり自分の将来に自信が無かったり、未来に期待ができない場合でも、物を捨てることができなくなります。家計が苦しい時は、自分に自信が持てない時でもあります。結果的に物を捨てられず、自宅が物で溢れかえります。

「また必要な時には買うことができる」という自信や未来への展望があれば、今ある物への執着が外れます。従って自分を磨き、今以上の自分になり、経済的に豊かになっていくことで、物を捨てられる自分になるのでしょう。

豊かになった自分の自宅はどんな状態でしょう? 今のように物で溢れ、散らかっているでしょうか? やはり、整理整頓されている情景が目に浮かぶのではないでしょうか? そのように考えると、お金や家計や人生と片付けにはたくさんの関連性があることに気付きます。

一晩でお金持ちになることはできませんが、物を捨てて片付けることは、一晩でも可能です。今できることとして、片付けや物を捨てることにとりかかりましょう。そうすれば、部屋に空間というゆとりができるように、心にもゆとりという空間ができ、お金や人生についてじっくり考える余裕ができるのではないでしょうか。

(文:二宮 清子(マネーガイド))

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