40歳子ども2人。家賃収入が15万あるのに貯蓄できない

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、貯蓄が思うようにできず、教育資金と老後資金に悩む40代の会社員女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします

教育資金、老後資金に加え、親の介護や兄弟の支援で不安に

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、貯蓄が思うようにできず、教育資金と老後資金に悩む40代の会社員女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

ちったいさん(仮名)

女性/会社員/40歳

関東在住/社宅(転勤のため。地方に持ち家マンションあり。現在賃貸にしている)

家族構成

夫(会社員/43歳)、子ども2人(小学6年・小学4年)

相談内容

家賃収入が毎月15万円あるので、本当は毎月10万円以上は貯金したいが、なかなかためられず、貯金を切り崩すことが多々あります。将来、私たちが負担することになる実母(シングル)の介護費の他、実弟は障害がありアルバイトしかできないため、その支援費用も不安です。これから増える教育費、自分の老後費が貯められるか悩みます。

家計収支データ

「ちったい」さんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)加入保険の内訳

[夫]

・収入保障保険(保険期間58歳まで、月額15万円)=保険料5100円

・医療保険(入院5000円、他に手術給付)=保険料2060円

・がん保険(入院5000円、診断給付金50万円)=保険料1970円

[妻]

・医療保険(65歳払込終了終身保障、入院3000円)=保険料1763円

・共済(病気死亡400万円、病気入院4000円)=保険料2000円

・がん保険(終身保障終身払い、入院1万円、診断給付金100万円)=保険料3398円

・終身保険(45歳払込終了終身保障、死亡保障260万円、45歳時解約金150万円)=保険料4万6724円(半年払い/学資保険代わり)

[子ども]

・上の子/学資保険(17歳満期、満期金220万円)=保険料9724円

・上の子/学資保険(22歳満期、祝金13歳33万円、15歳33万円、17歳110万円、満期金110万円)=保険料5万9532円(半年払い)

[義母]

・共済=保険料5000円、他

(2)住宅ローンについて

物件価格/3900万円、諸費用/100万円、頭金/200万円

借入開始/2007年、返済期間/12年(繰上返済で短縮)

金利/変動1.475%

(3)ボーナスの使いみち(年間)

学資保険、車検、固定資産税の支払い/30万円、下の子の学校費用/20万円

貯蓄/10万円、予備費積立/20万円

(4)賃貸をしている自宅の年間コスト

固定資産税14万円、保険4万4000円、管理費・修繕費・駐車場代35万円、住宅ローンの支払い103万3500円(うち支払利息約40万円)

(5)進学・進路の希望

親としては2人ともにオール公立希望だが、高校から私立の可能性もあり。

(6)これまで貯蓄ができなかった要因(相談者コメント)

◎今まで転勤族ということもあり、2年に1度の引っ越し費用、飛行機代、ホテル代で持ち出しが多かった。会社からの補填が全額負担ではないので。

◎私が正社員時代、子供費用、保育園代、母への小遣いを含み毎月10万円ほど支出あり。

◎毎年、20~30万円は国内旅行代に支出。帰省代も別に10万~20万円支出。

◎月の支出で払いきれない子どもと夫の運動クラブの遠征代、宿泊代

◎ちなみに昨年は1~9月で約60万円を貯蓄(ただしほとんどボーナスから)

FP深野康彦からの3つのアドバイス

アドバイス1 現状では教育費で貯蓄がなくなる

アドバイス2 イベントは予算管理、貯蓄は先取りで

アドバイス3 「親の介護は親のお金で」が原則

アドバイス1 現状では教育費で貯蓄がなくなる

まず教育資金が用意できるかどうかを見ていきます。親としては大学までオール国公立を希望されていますが、高校から私立という可能性もあるとのこと。

私立高校に通う学生の年間平均学習費(学校外費用も含む)は約100万円ほどですから、3年間で300万円。また、大学については、進路を私立文系とすると4年間でかかる費用は平均390万円、理系だと520万円。したがって少なくとも2人合わせて1400万~1600万円、教育費として見ておく必要があります。

学資保険は上のお子さん名義で2本加入されていて、受け取る満期金、祝金の合計は506万円。学資保険代わりに加入している終身保険の解約返戻金150万円をそれに加えると、保険によって656万円が用意できます。

貯蓄は毎月の家計支出の変動が大きいようなので、毎年ボーナスから確実に貯蓄できている10万円のみを上乗せすると、下の子が大学入学となる8年後までに80万円が貯蓄増となりますから、貯蓄総額は980万円。大学までの費用がもっとも高くなるであろう進路を想定しても、何とか足ります。逆に言えば、このままの家計管理が続くと、お子さんの教育費だけで貯蓄が底をつく可能性があるということです。

アドバイス2 イベントは予算管理、貯蓄は先取りで

教育費が発生しなくなってから、老後資金を用意することもできます。ただし、下のお子さんが大学を卒業するとき、ご主人は55歳、奥様は52歳。ご夫婦揃ってまとまった退職金を手にできればいいですが、そうでなければそこから老後資金を用意することはきびしいものがあります。そうなると、ご相談にあるように、もっと貯蓄ペースを上げていくことが結果的に老後対策につながります。

貯蓄ができない要因は、ひとことで言えば「それだけ使っている」からです。あるいは「世帯収入が多いので、支出も多い」とも言えるでしょう。年間で貯蓄にまわったのが、昨年は60万円とのこと。つまりは、昨年の世帯収入が手取りで約690万円ですから、支出は630万円ということになります。月割りにすると52万5000円。まず、毎月このくらいを支出していることを認識しなくてはなりません。

その上で、何が大事で何であれば削れるのか。支出に優先順位を付けるのは難しいかもしれません。しかし、貯蓄するには避けて通れない作業です。おそらく、貯蓄ができない要因としてピックアップされた家族のイベントを見直すことになるでしょう。お金をかけない工夫と同時に「我慢」も必要になります。

確実に貯蓄をしていくには、目標額を設定して、先取り貯蓄していくことが効果的です。そのためには、旅行等の不定期支出は予算を組み、その範囲でやりくりしなくてはいけません。できれば毎月3万円、ボーナスからは支給額の半分程度を貯めることができれば、年間100万円。ひとつの目安にしてみてください。

アドバイス3 「親の介護は親のお金で」が原則

ご心配されているお母さんの介護ですが、かかる資金を負担したい気持ちはわかります。しかし、マネープラン的な考え方は「親の介護は親のお金で」が原則です。介護のために時間を使うことはあっても、よほどの事情がない限り、自分たちの資金まで使うべきではありません。親の資産(年金や貯蓄)と公的介護保険で行うべきなのです。

理由は、往々にして、子どもの資金を親が頼ってしまうということ。そして、一般的に、親より自分(子)の方が長生きするからです。また、もしお母さんが要介護になった場合、自分たちの老後資金を集中的に貯める時期と重なる可能性もあり、そうなると大きくマネープランが異なってしまいます。

もうひとつ、実弟の方の経済的支援については、障害があるとのことですから、確かに難しい問題です。しかし、親御さんの介護といい、何から何まで自分で背負うのはあまりにリスキーです。他にご兄弟の方がいれば、こういった家族の世話は分担すべきです。障害年金が受給できれば、それを利用することもできるはず。自治体の支援制度等も調べてみてください。

相談者「ちったい」さんから寄せられた感想

深野先生のおっしゃるとおり、やはり「それだけ使っている」ということですね(汗)。夫と私の収入が高かったときの癖が抜けきっておらず……かつ家賃収入があり、どこかで気を引き締めて生活していく気持ちが欠けていたようです。毎年、旅行やレジャーなどはこれくらいの予算と決めても、つい「せっかく行くから」と予算オーバーもしばしば。今まで、それでも何とかなると思ってましたが、このままでは教育費で貯金が底をつくという言葉にはっとしました。

自分たちの老後費も余裕があるわけではないのに、実家を手助けしなきゃいけない。と一人で悩んでましたが、不安になる前に行政支援や介護保険などを調べること、自分の貯金をつぎ込まないことなど改めて考えなおすことができました。まずは、いただいたアドバイスを忘れずに月に3万ずつ年間で100万ためることを着実に積み重ねていくことを肝に銘じていきます。

教えてくれたのは…… 

深野 康彦さん

業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ

(文:あるじゃん 編集部)

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