【特集】来たれ若者ライダー 高齢化進む中、メーカーに危機感

スズキのジクサー
BMWのG310R
ハーレーダビッドソンのストリート750
ホンダのCBR250RR

 風を切ってさっそうと走るバイクって、若者の乗り物だと思っていたら今は違う。日本自動車工業会(自工会)の統計によると、いまやライダーの平均年齢は52.9歳(2015年度)。年々高齢化が進み、ライダーのうち50歳代以上が占める割合は07年度に44%だったが15年度は61%に増加。逆に10~20歳代のバイク乗りは17%から9%に減った。中大型バイクの売り上げはシニア層の需要で現在は順調だが、若者に目を向けてもらえないとこのまま先細るだけ。危機感を覚えたバイクメーカーは若者ライダーを呼び戻そうと、新たな商品開発に乗り出した。

 ▽リターンライダー

 3月24日から3日間の日程で東京都江東区で行われた日本最大級の二輪の展示会「東京モーターサイクルショー」。各メーカーが発表した新型バイクを熱心に見つめる来場者は、やはり40歳代以上のシニア層の男性が目立つ。若いころにバイクに親しみ、結婚や子育てでバイクから離れたものの、経済的に余裕も出てきたことから再びバイクに乗り始めた「リターンライダー」と呼ばれる人が中心だ。

 一方、バイクが若者にそっぽを向かれている理由については、東京モーターサイクルショー協会の赤坂正人会長は「今の若者はスマートフォンや会員制交流サイト(SNS)など、バイク以外に余暇を振り向ける対象がたくさんある」と分析する。また、バイクを危険な乗り物だとして全国の高校で繰り広げられてきた「運転させない」「買わせない」「免許をとらせない」という「三ない運動」の影響も大きかったという。さらには非正規雇用の拡大などで若年層の消費意欲が低下している状況もある。

 ▽安い

 こうした中。スズキは、150ccの新型スポーツバイク「ジクサー」を発売した。インドで生産し、エンジンを単気筒とするなど簡素化し、価格は税抜きで30万円未満に抑えた。高速道路も走れるバイクとしては低価格で、排気量を日本ではなじみの薄い150ccとしたのも「グローバルスタンダート(世界基準)に合わせて、生産台数を増やすことでコストカットする」(業販営業部東日本・中日本担当部長の赤井浩之さん)狙いだという。ショーに来ていた若い女性も「安いけど、かっこいい。気に入ったわ」と話していた。赤井さんは20歳前後をターゲットに販売。一度バイクを好きになってもらえれば、さらに上級車種に乗り換えてもらえる」と意気込む。

 高級バイクの代名詞、米国のハーレーダビッドソンも今や購入者の平均年齢は47歳。若い人にも買ってもらおうと「ストリート750」を販売している。排気量1000cc以上の大型バイクが中心の同社としては異例の750ccと小さなバイクで、安いタイプで価格を100万円未満に抑えた。「若い人がターゲット。車重もハーレーとしては軽く取り回しもいい。1回の支払額を抑えるため支払い回数を増やしたローンも用意した」と広告宣伝担当の大堀みほさん。

 ▽中型バイク

 ハーレーと並ぶ高級バイクのBMW。ショーの会場に新型スポーツバイク「G310R」を展示した。エンジンは単気筒の310ccと、大型車中心のBMWとしては異例の中型バイクで、普通自動二輪免許で乗れる。今年中に販売開始予定で、価格は未定だがBMWのバイクとして割安感を打ち出すのは間違いない。ここ数年順調に販売を伸ばし、外国製大型バイクでは日本でシェア2位を占める同社だが、将来の展望に対する危機感は強い。日本法人のディレクター、リー・ニコルスさんは「当社の顧客は経済的に余裕のあるシニア層が中心だが、『お金持ちの年配の人のバイク』とのイメージを変えていきたい。若年層ユーザーとのバランスのとれた販売を目指している」と話す。

 業界の雄、ホンダも中型の新型スポーツバイク「CBR250RR」を発表した。250ccの高性能バイクで販売価格も70~80万円と高価となる予定だが、広報課主査の杉村享さんは「20~30歳代の若い世代を狙っている」と語った。(共同通信=太田清)

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