【特集】なるほど!で時短も一獲千金も

女性の発明展が50年

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第50回「なるほど展」=3月、東京・有楽町
今年の入賞作の1つ「拡大鏡付 手を汚さないバケツ」=3月、東京・有楽町
ロングセラーになった入賞作も多い。「ダイエットスリッパ」の中沢信子さん(左)と骨盤サポーターの津久田喜代枝さん=3月、東京・有楽町

 生活の中でのちょっとした思いつきによる発明・工夫を集めた「なるほど展」が、ことし第50回を数えた。

 女性の発明を奨励する活動を続ける「婦人発明家協会」の主催とあって、男女とも応募できるものの、毎年女性の発明品が多い。

 半世紀で、女性の発想はどう変化してきたのだろう。3月上旬に開かれた展示を見に行ってみた。

 ▽なめらか

 東京・有楽町。入賞作計31点が展示されたギャラリーは見学者が絶えない盛況ぶり。

 ジャケットを着るとき、中のシャツの袖がずり上がるのを防ぐクリップ、帯を結んだお太鼓部分を収納にした帯製ウエストバッグ、粉末薬の袋を開けやすくしたホルダー…。「そうそう、こうすると便利よね」。身近な不便を解消する視点に感心するつぶやきが聞かれた。

 「女性の発明は大げさじゃない、日常生活からのなめらかな思いつきが多いんです」と話すのは、同協会の石原匠子副会長。

 同協会は1953年発足。女性の発明を奨励するため、特許や意匠など権利についての勉強会や、商品化につながる情報交換の機会提供などの活動を続けている。正会員は女性に限り、現在約150人。60―70歳代が多いそうだ。

 「発明家のロイヤルティー(権利料)は決して高いと言えない状況の中、特に女性の発明やアイデアは、長らく報酬対象に見られず、商品化されても権利料がほんのわずかという契約もあったんです。現時点ではまだまだ支援が必要だと考えて、正会員は女性に限っています」と石原さん。

 ▽時短

 毎年約200点の応募があるなるほど展。女性による歴代の入賞作には、洗濯中の糸くずを取るネット、食用油の酸化を防ぐ保存容器、掛け布団と敷布団両用のふとんカバーなど、家事を楽にする道具が多い。今で言う「時短」グッズだ。

 そしてこの50年の間に日本は高齢社会、超高齢社会に至った。高齢化が進むにつれ、脱ぎ着させやすいパジャマや補聴用具など介護に役立つ発明が増えているという。

 今年の入賞作「拡大鏡付 手を汚さないバケツ」も、介護での汚れ物洗いのための発明。バケツの側面の穴から、内側に付けたゴム手袋に手を入れて洗い物ができるしくみだ。洗い物の後、汚れた手袋をどうするか困りがちだが、バケツ自体を手袋にすることで解決する。老老介護を助けるべく拡大鏡付きだ。

 石原さんは「昔は介護は家族の中だけで行われることが多かった。楽にやる工夫をしたら、手抜きだと批判されたお嫁さんもいました。最近は介護が家族だけに収まらないものになり、便利にするためのアイデアも話題になったり広まったりしやすくなったのではないでしょうか」とみる。

 ▽一獲千金も

 ロングセラーとなった作品も少なくない。

 茨城県の津久田喜代枝さん(80)は26年前、自身の体調改善にと思い付いた骨盤サポーターが「なるほど賞」に選ばれた。事業化し、現在はひざや腕などサポーター商品の展開を広げている。

 つま先から土踏まずまでと短い「ダイエットスリッパ」は中沢信子さん(73)が発明した1990年の入賞作。すぐに商品化され、これまでに500万足を超える売れ行きだ。

 石原さんは「一獲千金を狙った発明もありますが、ただ発明が好きだという会員が多い。アイデアが浮かぶとテンションが上がるんです」。

 集まって意見を出し合い発明に至る和気あいあいとした団体を想像したのだが、全く違った。個人で発明し、特許出願など権利上の手続きを取るまでは、アイデアについてお互いに話さないことが重要なのだそうだ。「途中段階を話したり聞いたりすると、最終的に『まねをした』『まねをされた』などとトラブルのもとになります。ある時期まではひとりで黙々と取り組むことが大切です」と石原さん。

 不便に感じる点が重なることは多いらしく、先を越された発明に歯ぎしりすることはよくあるという。常に手帳を持ち歩き、アイデアは思い付いたらすぐメモするそうだ。(共同通信=小森裕子)

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