【造船業の課題とJMUの取組み】〈三島愼次郎社長が会見〉造船再編「戦うための器必要」

設計機能、本社に集約

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JFEホールディングスやIHIが大株主の造船大手、ジャパン・マリンユナイテッド(JMU)の三島愼次郎社長が会見し、造船業の課題やJMUとしての取り組みを語った。主なやり取りは以下の通り。(黒澤 広之)

JMU・三島社長

――足元の環境をどう見ていますか。

 「世界的な船腹過剰は変わっておらず、受注や船価は低迷している。昨年の発注量は世界全体でも1820万グロストンで、2000年以降では最低だった。日本造船工業会では3500万GTの需要が適正と見ているが、この需要予測を下回ったのは久しぶりだったのではないか」

 「その中でJMUとしては1万4千個積み大型コンテナ船の建造が順調に進んでおり、久方ぶりの最新鋭自動車運搬船も引き渡すことができた。今は大型LNG船と大型フェリーに注力している」

 「艦船では3月22日に4隻目のヘリ搭載型護衛艦『かが』を引き渡した。その直前には『あわじ』に続く掃海艦『ひらど』の進水式も行っている。イージス艦の建造もスタートした。『あたご』の改修も順調に工事を進めている。フィリピンのODA案件10隻は3隻の建造が完了した」

――2017年の展望は。

 「基本的に荷動きは増えていくと思っているが、米国に端を発する保護貿易主義は海上輸送に影響を及ぼす恐れがある。また今年はフランス、イタリア、ドイツで選挙があり、これらによって為替が大きく変動するのではないか。トランプ政権の政策がうまくいくかも左右してくるだろう」

 「JMUとしては、日本の海運発展や海上防衛の一翼を担うべく、様々なニーズに迅速に対応できる体制を整備していく。具体的には4月から各事業所にまたがっていた設計を一元化し、100人ほどを本社に集め効率化を進める」

 「JMUには事業所がたくさんあり、これは強みにも弱みにもなる。メリットへ持っていくには事業所ごとに競わせ、作業手順も水平展開し最も良いものを取り入れていく。そのためにも本社への集約を進める」

 「大型フェリーは4月末にも1番船を引き渡す。津事業所のLNG船も20年ぶりのアルミ製SPBタンクということで、慎重に検討しお客様とも協議しながら進めている。イージス艦を含め、JMUはスタート時から挑戦の連続だ。これを乗り切り、次世代へしっかりつなげていきたい」

――造船業をめぐる環境は厳しい。

 「国土交通省は海事局が中心となりアイシッピングや世界シェア30%の回復などを掲げている。当社としても既存の設備を最大限に生かし効率化を進めていく。優秀な人材を確保していくことも大切だ。大学や研究所、海運会社などと連携し取り組む」

 「防衛省の意向にも全力で応えていきたい。日本の艦船建造の強みは、納期がしっかりし短期間かついい品質で仕上げられることだ。そのためには大変な努力が必要で、艦船事業だけではそれだけの人員を確保できない。商船事業などもしっかり手掛けていくことが、艦船での短納期対応にもつながる」

――設備投資は。

 「16年度は当初より絞り込み50億円強になった。17年度は60億円規模を計画している。これまでは船種を増やすための投資だったが、これからは老朽更新をしっかり行い、設備影響で生産が止まることないよう備えていく」

――人員体制は。

 「4月に入社するのは総合職50人、事業所採用は130人で、中途採用も50人計画している。社員数は5500人で、ベトナムの実習生500人やグループ会社1千人を含めトータルで7千人だ。この雇用をしっかり守っていかなければと思っている」

 「造船の仕事は特殊だ。艤装や電線など、例えれば脳外科、心臓、内科、外科をそれぞれ極めているようなものだ。こうした人達の気持ちを常に考えるのが造船の経営だと思っている」

――韓国や中国造船業をどう見ていますか。

 「昨年秋に韓国で行ったJECKU国際会議では、日中韓の認識が『供給過剰で厳しい情勢が続く』と初めて一致した。ただ韓国についてはここ1年、要注意だと思っている。海運マーケットが上向きの時に大変な勢いで設備能力を増やし、結局造り過ぎてしまった。ここで破たんした企業は本来、市場から退場しないといけないのだが、あまりに雇用への影響が大きいので韓国政府は1兆円もの補助を出すとしている。自然淘汰があるべきなのに、実際に起きているのは韓国勢の受注攻勢だ。これはいかがなものなのか。国交省もOECDを通じて意見しているが、我々もおかしいと思っている」

 「しかし目の前の現実に対処するには、韓国や中国にない日本の海事クラスターの強みを最大限生かしていくことだ。日本には船主、造船、鋼材など素材、舶用機器メーカーがあり、金融機関、保険も充実している。ただ安くするだけでは、メーカーも持たないし、信頼は得られない。取引先と共に日本の海上物流のため、志を一つに取り組んでいかないといけない」

――4月の役員人事では、事業所長を大幅に入れ替えます。

 「企業はどんどん世代交代をしていかないといけない。しかし、ただ交代すればいいというものでもない。バランスをとりながら、チャンスを見て世代交代を進めようというのが今回の人事だ」

 「造船所の所長は現場を知った技術者でなければいけないとは思っていない。現場のことはもちろん知っていないといけないが、所長の仕事は経営。人事、財務、営業、技術などどの出身であれ優秀な人材であればいい」

――IHIからは安部昭則氏を迎え、有明事業所長に起用します。

 「私は安部さんをよく知っている。東大の造船出身で(ユニバーサル造船とIHIマリンユナイテッドの)統合を検討する際のメンバーだった。統合や造船への思いをよく知っている。仮に有明の所長になったらどういう絵を描くのか聞いたことがあったが、安部さんは見事に描いてきた」

――艦船事業本部では役員を増やします。

 「本部長と横浜事業所長は兼務でなくそれぞれに役員を置くほか、新たに副本部長を置き、艦艇統括部長も役員とした。事業の柱の一つとしてしっかり取り組む狙いだ」

――オールジャパンとしての造船業のあり方をどう考えますか。

 「心配しているのは、強みだった中長期の技術開発だ。かつては総合重工の中で造船事業が共同で将来の技術を開発してきたが、徐々に弱まっているのが現状。しかし、まだ間に合うと思っている。中長期的な課題に取り組む人たちが集まれば、日本の技術の底上げはできる。そのために問われるのは志だ。造船事業が1企業の中に置かれていては、閉塞感があるのではないか。思う存分に戦うための大きな器が必要ではないかというのが私の思いだ」