【特集】慰安婦問題が今…

米の像撤去訴訟敗訴、半島は激動

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韓国・釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像を訪れた文在寅氏(手前)=1月(聯合=共同)
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米国の慰安婦像撤去訴訟の報告会で話す「なでしこアクション」の山本優美子代表=1日
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「第1回日本軍『慰安婦』博物館会議」に出席した関係者ら。前列で着席の右から2人目が「女たちの戦争と平和資料館(wam)」の池田恵理子館長=1日

 「慰安婦問題」の先行きが読めなくなってきた。2015年末の日韓合意で「最終的かつ不可逆的」に解決したはずが、昨年末に釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置。日本の駐韓大使らが長期一時帰国したが、撤去の見通しがないまま帰任した。この間に米ロサンゼルス近郊の像の撤去を求めた訴訟の敗訴が確定。韓国では来月の大統領選の各候補が合意の見直しを主張し、合意に反対する民間団体も活動を活発化させている。

 ▽成果も

 4月1日夜、米グレンデールにある慰安婦像の撤去訴訟を起こしていたNPO「歴史の真実を求める世界連合会(GAHT)」が、3月下旬の敗訴確定を受けた報告会を東京都内で開催。目良浩一代表はビデオレターで「米国ではかなりの知識人でも『慰安婦=性奴隷』を信じている。今後は正しい知識の普及で撤去を目指したい」と語った。

 裁判活動の成果もあったという。2月には日本政府が原告支持の立場から米最高裁に異例の意見書を提出。下級審の時期にも、政府は国連の場などで「強制連行を示す証拠はない。事実として報道した朝日新聞は誤りを認めた」といった主張を発信してきた。

 国連の人権関係の会合にも出席してきた「なでしこアクション」の山本優美子代表は「(像や碑文設置への)抑止力となる資料はそろった。ちょっと調べれば日本政府の主張や事実関係が分かる状況で像を設置しようというところは韓国以外ではもう出ないのでは」と話した。

 ▽日本糾弾

 同じ日の午後、都内の別の場所では「女たちの戦争と平和資料館(wam)」が、韓国や中国、フィリピンなどの慰安婦関連の博物館関係者を集め「第1回日本軍『慰安婦』博物館会議」を実施。グレンデールの像設置を進めた「カリフォルニア州韓米フォーラム」のフィリス・キム氏は、裁判の「勝利」を強調し「これからも公共の場所に像を設置することが重要」と述べた。

 wamは、日韓合意は「被害者無視の両政府の談合」との立場。池田恵理子館長は「日本は歴史の責任に向き合う勇気と知性がない国としてさげすまれている」と持論を展開。「これからも国際連帯を強めていく」とあいさつ。採択された宣言文は「日本政府は過去の歴史を書き換え」ようとしていると記した。

 ただ慰安所の設置・衛生の管理、慰安婦の移送に軍が関与したことまで否定する論者は日本政府も含め皆無に近い。紛争下の女性の人権侵害防止に努める政府の立場も明確だ。「慰安婦強制連行」を盛んに報道した朝日新聞ですら誤りを認めた状況で、日本政府糾弾では議論はかみあわない印象も残した。

 ▽ウィーン条約

 朝鮮半島問題に詳しい西岡力・麗沢大客員教授は「(元慰安婦とされる)おばあさんの7割がお金を受け取っており人道問題は実質的に解決した。今は像の問題」と話し、ポイントとして外国公館、領事機関に対する尊厳侵害の防止を定めた「ウィーン条約」を挙げる。

 1月に長嶺安政駐韓大使が一時帰国した後、韓国では主要紙が条約に言及、尹炳世外相も釜山の像設置は「不適切」と発言した。「大使が(韓国に)いる時はできなかったことが、日本に帰ったらできた」と西岡氏。「帰任した大使の仕事は、日本が求めているのはウィーン条約に基づくソウルと釜山の日本公館前の2体の像撤去で、ほかの数十体ではないことを繰り返し、明確に韓国社会に訴えること」と注文した。

 ▽半島危機

 西岡氏は来月の韓国新政権誕生後の朝鮮半島情勢の成り行きを懸念している。最有力の左派の文在寅候補は当選後の早期の平壌訪問を明言しているからだ。行けば2000年に韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記が宣言した「低い段階での連邦制」に向けた実務者協議開始で合意する可能性が高いとみている。

 ことは反共・自由・民主の価値や米韓同盟といった韓国の国家体制の根幹に関わる。西岡氏は「保守勢力もそれなりの力があり簡単には北朝鮮主導で統一に向かおうとはならないだろう」としつつ「場合によっては、日韓合意はおろか1965年の日韓基本条約の無効を言ってくるかもしれない。釜山には慰安婦像どころか日本をターゲットにしたミサイル基地ができるかもしれない」と起こり得る最悪の事態を想定した。(共同通信=松村圭)

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