《ブラジル》LJ作戦=「98人捜査許可」で衝撃走る=下院議会はまたも重要法案の審議延期に=改革への道のり険しく

財政緊急事態宣言を出した州財政再建計画法案採決を目指したマイア下院議長(右から2人目)だったが…(Antonio Cruz/Agência Brasil)

 11日午後、エジソン・ファキン最高裁判事が現職閣僚、上下両院議員、州知事ら総勢98人に対する捜査開始を許可したことが、エスタード紙によってすっぱ抜かれた。それによる大混乱のため、連邦政府は下院本会議に連立与党の議員を動員する事が出来ず、財政上の非常事態に陥った州に対する財政再建計画(RRF)に関する法案採決を延期せざるを得なかったと、12日付現地紙が報じた。
 自らも捜査対象となったロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)は、6時間に及ぶ同法案に関する審議のあと、RRFの採決を待たずに閉会を宣言した。
 ファキン判事による捜査開始許可の対象に、現職下議だけで39人に及ぶ名前が挙がっていた事が分かると、下議たちはRRFの審議中であるにもかかわらず、本会議場を後にし始め、出席議員数が採決可能な定数を割り込んだためだ。
 また、捜査対象であるか否かに関わりなく、多くの議員が復活祭の休暇のため、12日にもブラジリアを離れるために、RRFの採決は来週に持ち越された。
 捜査対象リストに名前のなかった議員は、がらんとした下院を見て「上院の定数が増えたようだ」と皮肉を言い、「何と! 汚職防止法の報告官まで汚職捜査の対象なのか」とオニキス・ロレンゾーニ下議(DEM)を揶揄した。
 ファキン判事が、大物政治家数十人に捜査開始許可を出していたことが発覚した11日、為替相場は0・29%ドル高の1ドル3・148レアルで引けた。株価も前日より0・45%下がり、平均株価指数(Ibovespa)は6万4359ポイントで引けた。
 どちらもそれほど大きな動きはなかった理由は、捜査対象となった政治家はほとんどこうなる事が予測されており、前日までの値動きもそれを織り込んだ値だったからと市場関係者の中で指摘されている。
 しかし、「これによって、政府の統制力はより低下した。さらには、与党政治家の名が多くリストに上がっていることで、年金改革に代表される政府の改革路線の行く末が不透明になった」と、ある証券会社の幹部は語った。
 経済評論家のミリアン・レイトン氏も、「現政権の目指す財政改革の道はより時間がかかり、複雑になった。国外の経済格付け会社の評価も下がるだろう。ただ、この逆風が伯国政治の刷新の助けになる可能性も残されている」とした。

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