列震 熊本・大分地震から1年⑧

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耐震工事を機に客室の面積を広げる改装をしている両築別邸の緒方肇社長=別府市

 「今年に入っても宿泊数は堅調に推移し、心配していた『ふっこう割』終了後の落ち込みは少なかった」

 熊本・大分地震後、宿泊施設でキャンセルが続出した九重町。九重“夢”大吊橋などの観光地は閑古鳥が鳴いただけに、秋好英孝町観光協会事務局長はほっとした口ぶりで話した。

 熊本・大分地震は書き入れ時のゴールデンウイーク直前に発生。県観光は大きな打撃を受けたが、昨夏から始まった旅行クーポン「九州ふっこう割」や各地のPR活動が功を奏し、入り込み客数は夏には地震前まで戻った。県の観光統計によると、地震直後の宿泊客数は前年同月比6割程度に落ち込んだ。昨年12月~2月は前年比99~106%で推移した。入り込み客数は全体としては順調だが、地域や宿泊施設を個別に見ると復興もまだら模様だ。

 別府市では昨年来、大規模宿泊施設が相次いで耐震化工事や建て替えに入った。法律に基づく耐震診断結果の公表(昨年12月)を受けた対応だが、地震が加速させた。市内では現在、4施設(約450室)が営業休止中。その分、市の宿泊客数も減少している。

 観海寺温泉の両築別邸は1~6月まで休業し耐震化工事を実施する。当初、営業を継続しながら14カ月かけて工事する計画を前倒しした。客室も改装し、収益性を高める狙いだ。緒方肇社長は「2019年のラグビーワールドカップ(W杯)大分開催に向け、今から準備を始めると捉えたい」と前向きさを強調した。

 平日も観光客でにぎわう由布市由布院温泉。「表面的に人は戻ってきたがこれからどうなるか」と草庵秋桜(こすもす)の太田慎太郎代表取締役はこぼす。湯布院はこれまで熊本県などを周遊する観光ルートの一つに位置付けられてきた。

 地震後、熊本県内の国道57号が通行止めとなるなど、阿蘇や熊本市を巡るルートは組みづらくなった。全国や海外との競争を考えると、「湯布院や九州観光の魅力が弱まっているのでは」と懸念する声もある。由布市は震度6弱の強い揺れが襲い、緊急の補修や改修が必要となった施設は多い。太田代表取締役は「リーマン・ショック後の苦しい時期からようやく上向いたと思った時に地震が起きた。地震後の観光客減と補修などで出費は厳しい。復興は長い目で考えたい」と話した。

 阿蘇と観光面での結び付きが強い竹田市は団体客の落ち込みが続く。日田市はアジアを中心とした訪日客は順調だが、国内客は例年並みに戻っていないという。ふっこう割特需もあって危機的状況は脱した県観光だが、今後は各地の魅力向上など地道で長期的視点の取り組みが求められる。

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