知らないと損!国民年金の免除制度とは

派遣切りやリストラで失業など、安定した収入がない人にとって国民年金保険料の負担は重いもの。国民年金の免除制度は、そんな時に利用できるお得な制度!

失業中の保険料の負担は重い!

非正規雇用がまだ多い中、有期雇用の雇止めなどで就職活動に励んでいる人もいるのではないでしょうか? 新しい就職先を探すのは大変なことだと思います。しかし、ご自身の年金がどうなっているかご存知ですか?

会社員時代は厚生年金に加入していた人が多いと思いますが、このような人は退職と同時に国民年金に加入することになります。でも、国民年金の保険料が高いので、加入の手続きをしていないという人はいませんか?

国民年金の加入手続きが済んでいない人は、今すぐ自治体の窓口に行って加入の手続きをしましょう。所得制限がありますが、条件によって保険料が免除される制度があります。

この免除の手続きをするだけで、保険料を払わなくても、ある程度の年金制度の恩恵を受けることができるのです。今回は、この国民年金の免除制度についてご紹介します。

受給条件は加入期間10年以上

老後に老齢年金を受給するためには、国民年金や厚生年金などの加入期間が10年以上ないといけません。つまり9年11カ月の間、年金保険料を納めたとしても、老後の年金額は0円ということになるのです。

平成29年7月までは、加入期間が25年以上という条件でした。25年以上の加入期間から10年になり、年金が受け取れないという人は減りました。

とはいっても、老齢年金は加入期間によって支給額が変わります。加入期間が長い方が年金額は多くなります。

このように加入期間は大切。60歳を過ぎてから「しまった!」と思っても遅いのです。加入期間は途切れなくしておくのがポイントです。

障害・遺族年金ももらえなくなる?

年金は老後のためだけではありません。病気やケガによって法令で定められた障害状態になれば、「障害年金」が支給されます。

また、死亡した場合、18歳以下の子ども(障害がある子は20歳未満)がいる場合は「遺族年金」も支給されます。

国民年金での障害基礎年金は、障害1級で年間99万7125円。遺族基礎年金は、子が1人と妻の場合は年間100万6600円(令和2年度)。

いずれも、年金がない生活は考えられませんよね。これらの受給は、きちんと国民年金に加入していないともらえませんよ。年金は老後のことだけではありません。

条件によっては保険料の免除制度も利用可能

とはいっても、退職後で定職もなく生活をするのがやっと……という状況では、保険料の納付も大変。国民年金の保険料は月払いで1万6540円(令和2年度)。家計にかなりの負担になります。

そんな時は、免除制度を利用しましょう。収入によって、保険料を免除されることがあります。免除期間も年金加入期間にカウントされますし、障害年金や遺族年金も受給できます。 また、失業等による特例もありますよ。

国民年金保険料が免除されるかは、前年の所得で決まる

国民年金保険料免除の所得基準

国民年金保険料が免除される所得基準。前年(もしくは前々年)の所得で判断される。家族構成によっても基準が変わる ※1:子はいずれも16歳未満、※2()内は収入の目安。夫か妻のいずれかのみに所得(収入)がある世帯の場合。一部免除の目安の所得(収入)は、一定の社会保険料を支払っていることを前提とした場合の目安

表は、国民年金保険料の免除制度が利用できる所得基準です。この免除制度は、家族構成とその所得によって、免除が受けられるか、受けられるとしたらその範囲が決まります。

例えば、夫婦2人の世帯であれば、92万円の所得で全額が免除、195万円の所得で半額免除が受けられます。判断基準となる所得ですが、前年(または前々年)のものが対象となりますのでご注意ください。

所得は、収入から扶養親族等控除額や社会保険料控除額などを引いたものです。およその収入が表のカッコ内に記載してありますので、参考にしてください。夫か妻のみの所得があり、一定の社会保険料を払っていることを仮定しています。

この所得ですが、本人だけでなく、配偶者や世帯主の所得も所得基準の範囲内である必要があります。自分自身の収入がなくても、他の家族に収入があれば免除が許可されないということです。

全額免除でも年金額は2分の1もらえる

免除されている間は年金加入期間としてカウントされます。なので、加入期間が足りなくて老齢年金が受け取れないという事態は少なくなりそうです。また、将来の老齢年金の受け取れる年金額も少しは増えます。

例えば、全額免除でも、保険料を全額払った場合の2分の1は支給されます(平成21年3月分までは3分の1となります)。

保険料の免除の割合と支給される年金額

・全額免除……年金額1/2(平成21年3月分までは1/3)

・4分の1納付……年金額5/8(平成21年3月分までは1/2)

・2分の1納付……年金額6/8(平成21年3月分までは2/3)

・4分の3納付……年金額7/8(平成21年3月分までは5/6)

基礎年金の国庫負担が平成21年4月より、3分の1から2分の1に引き上げられました。それにともない、全額免除での年金支給は、3分の1から2分の1に引き上げられました。さらに、免除の効果が高くなったわけです。

失業者向けの特例免除も

これらの免除の所得基準は、前年の所得で判断されるものです。なので、今年になって退職し収入もなくなったのだけど、去年は収入があったという人は、上の免除制度が利用できません。

そんな時は「失業等による保険料免除」を利用しましょう。本来であれば、本人と配偶者、世帯主の所得で免除の審査をされていたのですが、この特例では、本人の所得を除外して審査がされます。

前年の所得があっても免除制度が利用できるのは、失業者にとってありがたいですよね。

この特例が利用できるのは、その年度または前年度に退職(失業)の事実がある場合です。この特例も、通常の免除と同様に加入期間にカウントされますし、年金額もアップします。該当する人はすぐにでも申請をしましょう。

国民年金免除の申請手続きは、自治体窓口か郵送で

免除申請の手続きは、住民登録をしている市区町村役場の国民年金担当窓口へ申請します。郵送でも申請ができます。申請用紙は、市区町村の窓口や年金事務所で、もしくは日本年金機構のHPよりダウンロードして入手します。

また、この申請は毎年行わないといけません。免除の申請サイクルは7月から6月までです。7月になったら新たに申請をするようにしましょう。

いかがですか? 年金といえば遠い先のことと思わずに、今できることを対策しておきましょう。

年金不安などといわれていますが、年金が受給できないとなると、安定した生活は難しいかもしれません。まずは、年金を受けられるように手続きをしておきましょう。

(文:福一 由紀(マネーガイド))

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