新たな夢へ 地震後、産山村に移住

ワイナリー経営めざす

画像昨年10月に産山村に移住した武本規博さん(左)と妻多恵さん。左奥が来春にカフェレストランを開店予定の納屋で、右側が自宅=産山村

 熊本市中心街でレストランを経営していた武本規博[のりひろ]さん(39)、多恵さん(47)夫妻は、熊本地震を機に産山村に移住した。「地震は大変だったが、新たな挑戦を始めるきっかけになった」。新天地でワイナリー経営を夢見て歩き始めている。

 大学卒業後、東京でフランス料理を修業した熊本市出身の規博さんは2007年、帰郷して「ツノ・レストラン&カフェ」を開店。雑貨クリエーターの多恵さんが手掛ける商品も販売し、人気を集めていた。

 借金も返済し、順風満帆の店を熊本地震が襲った。自宅マンションも店の建物も致命的な被害はなかったが、食器は割れ、仕込んでいた料理も廃棄。数日の避難生活で水の確保にも苦労し、「街には住めないと思った」と多恵さん。規博さんは「人間の弱さや生きる力のなさを痛感した」と振り返る。

 規博さんは店で出す料理の素材にこだわってきた。「自ら食材を作ることが究極の料理人」との思いから、いずれ田舎に移ることを考えていたという。

 片付けなどを済ませ、地震の1週間後に移住を決意。山都町を経て、昨年10月に産山村に移った。知人らの紹介で大分県境の山あいの古民家を購入し、7歳の愛犬グリルとともに暮らし始めた。

 東京育ちの多恵さんは「お金を使わないと豊かさを感じない都会と、正反対の豊かさが居心地いい。水や食料の心配はないし、特に不自由を感じない」と笑顔で話す。地域総出の原野の野焼きなどにも参加している。

 高校時代、ボクシングで全国王者になった規博さんは「ボクシングと同じで基本が重要。農業を一から学びたい」と来春の就農を目指し、4月から合志市の県立農大の研修生になった。

 夢はワイナリーの経営。既に農地10アールを借りてブドウの苗木300本を植え、今後、徐々に拡大していく計画だ。自宅に隣接する納屋をカフェレストランに改装し、来春開店の準備も進めている。

 当面は貯金を切り崩す生活の上、ブドウ栽培の成功は未知数だが、夫妻は「なるようになる」。「村人をはじめ、この1年で出会った多くの人に支えられている。地域の役に立てるよう、頑張りたい」と見つめ合った。(岡本幸浩)

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