【創刊70周年メモリアル座談会 非鉄金属業界の将来展望(1)】〈現況と課題〉西田氏「業績好転の兆し」、浜地氏「新規需要創出を」、伊藤氏「東京五輪に向け伸長」、堀氏「生産好調で収益回復」

糟谷敏秀氏(経済産業省製造産業局長)、西田計治氏 (日本鉱業協会前会長、三井金属鉱業社長)、浜地昭男氏(日本アルミニウム協会会長、三菱アルミニウム社長)、伊藤雅彦氏(日本電線工業会会長、フジクラ社長)、堀和雅氏(日本伸銅協会会長、三菱伸銅社長)/司会・一柳朋紀鉄鋼新聞社編集局長

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――本日は、非鉄金属業界を代表する4団体のトップの方々に集まっていただきました。経済産業省の糟谷製造産業局長にも加わっていただき、座談会を通じて、非鉄金属業界の将来を展望してみようという試みです。非鉄金属と一口に言っても、業種は多岐にわたります。そこで、まずは4団体のトップの方から各業界の現況を話していただければと思います。

座談会の様子

西田 非鉄製錬業界は、全体として底を打ったという状況で、天気で言えば曇りから晴れと変わり始めたというところでしょうか。企業収益という点では、2016年度は金属価格の下落や円高影響などで上期は低調でした。しかし下期以降は、中国需要の回復や米国のトランプ大統領への政策期待もあって金属価格が上昇、為替も円安に向かったことから会員各社の業績は好転しつつあります。

 懸念材料は原油価格や電力料金の上昇です。電力多消費産業という性格上、コストへの影響が懸念されます。また、インドネシアが代表的ですが、原料鉱石産出国における資源ナショナリズムの動きにも注目しています。

浜地 アルミ業界は晴れ間が見えてきたところです。主力の飲料用アルミ缶向けが好調に推移しています。コーヒー飲料缶市場でスチール缶からアルミ缶へ切り替わる動きなどがあり、これが追い風になったと思います。また、アルミ缶が多く使われるアルコール飲料の市場も若い人のビール離れが指摘される一方、チューハイやハイボールが伸びており、全体では堅調に推移しています。自動車向けですが、地球温暖化対策の新しい枠組み『パリ協定』の発効を受けて、今後、自動車の軽量化志向が一段と強まる見通しです。これもアルミ需要を押し上げると期待されます。アルミ建材はどちらかというと勢いがなかったのですが、東京オリンピックの開催に向けてオフィスビルなどで需要が出てくる見込みです。西田会長が先ほど、電力価格の上昇を懸念材料に挙げましたが、アルミ業界の場合、16年度で見れば、電力や天然ガスなどのエネルギー価格が想定より下がりました。原油価格の動向には引き続き注意が必要ですが、昨年度は、エネルギー価格の下落が企業業績を押し上げる一因となりました。

 業界の課題ですが、自動車の軽量化ニーズという明るい材料に対して、アルミならではの新たな製品、つまり新規需要を創出できるかが重要になるでしょう。

伊藤 全体的には曇りが続いている印象です。電線工業会は8割以上が中小・中堅メーカーで構成されており、内需に頼る部分が大きい。銅電線の内需は東京五輪に向けて伸びてくるのは間違いないところです。ただ、建設・電販の電線の荷動きが立ち上がってくるのは、当初予想していた16年度ではなく、17年度後半になるとみています。需要のピークはやはり18~19年ではないでしょうか。

 アルミ電線は市場規模が年間約3万トンと銅電線の30分の1程度ですが、自動車用ワイヤハーネスでの採用に期待が持てます。また発電所―変電所間の送電線では経年劣化も懸念される状況なので、今後はコンスタントな需要が出てくる可能性があります。

 光ファイバーについては曇りから晴れ間が少し見えてきています。国内市場は非常に厳しい状況ですが、中国や欧米のデータセンター向けや、建物に光ファイバーを引き込むFTTH向けの需要が非常に伸びています。

堀 足元の伸銅品需要は非常に好調です。もともと好不調が激しい業界で、15年度は需要減退、企業収益悪化という状況でしたが、16年度夏ごろから板条や棒、管などの生産が繁忙となり、各社の収益は回復基調となっています。板条製品は最近、スマートフォンや電装化が進む自動車関係の電子材の拡大に伴い、供給が追い付かない状況すら散見されます。加えて東京五輪に向け、建築関連需要も期待できるので一般材も底堅い動きになるでしょう。

 課題としては、板条に見られるような供給不足の状況が続けば、他素材への転換リスクが台頭してくることです。生産が繁忙なのはうれしいのですが、その背景には伸銅品の『軽薄短小化』があり、加工度が上がり製造設備の負荷が高まっているにもかかわらず、重量販売であるために価格が上がらないというジレンマがあります。重量ではなく、長さや面積で評価してもらえるように取り組むことも重要でしょう。

〈国内市場の現状と中期的トレンド〉

糟谷氏「産業構造転換を好機に」

西田氏「新市場への対応がカギ」

浜地氏「インフラ分野へ提案強化」

――足元ではアルミや伸銅のように生産が好調な業界も多いようですね。ただ、電線のように国内市場は東京五輪までの需要が期待できる一方、中長期的には縮小するとの懸念が強いのも事実です。そこで、マクロ的に見た国内市場の現状、先行きの展望や課題を糟谷局長に伺いたいと思います。

糟谷 この4年間のアベノミクスの結果、日本の経済指標にはさまざまな良い結果が出ています。例えば就業者数は170万人増加し、正規雇用も一昨年8年ぶりにプラスに転換しました。また、有効求人倍率は25年ぶりの高水準となり、初めて全都道府県で1倍を超え、中小企業や小規模事業者の倒産も26年ぶりの低水準で安定しています。一方で、地方の方々を中心にまだ景気回復の実感がないという声があることも承知しています。デフレ脱却に向けたチャレンジの中で、企業収益の向上を雇用拡大や賃金上昇につなげることによって、景気の好循環を実現できるかが課題だと思っています。

 日本経済は中期的には少子高齢化による人口の減少が予想されています。そういう意味では、量を追うという視点では新興国など海外の需要を開拓することが必要になるわけですが、国内では付加価値を高めるという方向での追求ができないでしょうか。先ほど堀会長がおっしゃったように、従来の重量取引ではなく付加価値ベースで評価する方向に向かえるかどうかだと思います。

 また、人口減は必ずしもマイナス面だけではない。世界全体で第4次産業革命という新たな技術革新の流れがある中、ロボットの活用やAI(人工知能)、ビッグデータの利用ということを進めることで人手不足の解消につなげることも可能でしょう。グローバルで進む産業構造の転換をむしろチャンスと捉え、前向きにチャレンジしていくことが大事だと考えています。

――国内市場では付加価値を高めていくことが必要だという指摘を頂きました。各業界から中期的な需要トレンドの見方もお聞きしたい。銅については西田会長に、アルミについては浜地会長にお願いします。

西田 国内の銅地金消費量はバブル景気直後の160万トンをピークに漸減し、足元は年間100万トンレベルで推移しています。銅のユーザー業界である電線、伸銅の市場は、先ほどお話にありましたように東京五輪に向けて需要増が期待されています。また、20年までに完了できない仕事も多く、20年以降もしばらくは需要があるとみています。しかし、その先については不透明感が強い。糟谷局長のおっしゃるようにボリュームの追求ではなく、新しい市場への対応が必要になるのかもしれません。

浜地 10年、20年先をにらんだ場合、少子高齢化の影響が飲料用アルミ缶や建材という市場に負の影響を与えてくる可能性はありますが、新たな市場を創出する余地もあるでしょう。例えば高齢化に伴い介護ロボットが活躍する場合、軽くて成形しやすいアルミが使用される可能性もあります。繰り返しになりますが、自動車の軽量化に合わせアルミの採用も増えてくると期待しています。最近では、錆びにくく軽いという特性を生かし、橋梁などのインフラ分野への提案にも力を入れています。