東京六大学野球で新たな取り組み 全試合無料配信、その狙いは?

東京六大学野球の春季、秋季リーグ戦を全試合無料でインターネット配信する「BIG6.TV」が始まった。このサービスは運動通信社とスポーツマーケティングラボラトリー(SPOLABo)の共同事業としてスタート。今回、サービスを始めることに至った経緯などをSPOLABoの荒木重雄氏に聞いた。

「BIG6.TV」の告知ポスター(慶應編)【画像提供:SPOLABo】

東京六大学野球で新たな取り組み 「新しい野球の見方」創出へ

 東京六大学野球の春季、秋季リーグ戦を全試合無料でインターネット配信する「BIG6.TV」が始まった。このサービスは運動通信社とスポーツマーケティングラボラトリー(SPOLABo)の共同事業としてスタート。今回、サービスを始めることに至った経緯などをSPOLABoの荒木重雄氏に聞いた。

 荒木氏はロッテの執行役員・事業本部長、パシフィックリーグマーケティング取締役、NPBエンタープライズ執行役員事業戦略担当などを歴任。「野球ファンを増やすためにはどうしたらいいか。どうしたらたくさんの人に野球を見てもらえるか」を常に考えてきたという。

「テレビやラジオだけでなく、インターネットでスポーツの試合を見られる時代になりました。インターネット配信は『どこでも見られる』というだけでなく、自分の好きな時間に見ることができます。プロ野球や高校野球はすでにネット配信されていますが、六大学野球を完全無料で全試合配信するサービスがありませんでした。そこで、歴史ある六大学野球で、プロ野球のメディア運営に携わってきた我々が、新たなメディアに挑戦してみようと思いました」

 同氏は「テレビで見ていた野球中継がどこでも見られる」というサービスではなく、テレビやラジオではない「新しい野球の見方」に挑戦している。

“野球ならではの特徴”生かしたコンテンツを意識

「『BIG6.TV』は、ただ試合の映像を配信しているのではなく、実況をつけています。ネット配信は、試合開始から最後までずっと見ている人は少ないので、今見た人に試合の状況を伝えられるように、実況にラジオのコンセプトを取り入れています。また、プロとは異なり、視聴者は選手を知っている前提ではありません。『何大学の何選手』だけではなく、初めて見た人でも、選手がどういう活躍、努力をしてきたかがわかる画づくりをしています」

 実況を担当するのは、元ニッポン放送アナウンサーの松本秀夫氏ら経験豊富なプロフェッショナルな人たち。選手の情報は専属のスタッフが調べるだけでなく、各大学の新聞部とも連携して集めている。

「スポーツにはさまざまな楽しみ方があると思いますが、野球ならではの特徴は、この選手はどの高校出身で、甲子園に出場していて、どの大学に行って、社会人に行って、ドラフト何位で入団して……というように、選手のストーリーを楽しめることだと思います。そこを掘り下げ、大学OBだけでなく、選手の出身高校のOB、出身地域の高校野球ファンなど、多くの人に楽しんでもらえるコンテンツにしたいと思っています。そういう意味で、「BIG6.TV」が展開されているインターネットスポーツメディア「スポーツブル」では、高校野球からプロ野球まで様々な形で展開されていますし、40種目を超える野球以外のスポーツを取り扱っているので、協業によってより多くの方に観て頂けると思いました。」

「BIG6.TV」では、告知ポスターも制作。ロッテで2005年に初めて挑発ポスターを制作した時のクリエイター、渡辺潤平氏と再びタッグを組んだ自信作だ。

新たなテクノロジーと放送の融合

「各大学4~6枚、全部で32種類あります。1大学につき、練習風景の写真を2000枚ほど撮りました。選手たちの原点、神宮を目指すまでの練習風景にスポットを当て、厳選した写真にコピーを入れました」

 荒木氏は「サービスを通じて、視聴者だけでなく選手たちにも喜んでもらい、モチベーションにつながってくれたら」と話す。「BIG6.TV」は、ここまで想定より多くの人たちに視聴されており、手応えも感じている。

「今、スポーツ×ICT(情報通信技術)が注目されています。これをベースに、新しいテクノロジーを放送にかけ合わせていけたらと考えています」

 六大学野球の新たな楽しみ方がスタートした。ファンがさらに野球を楽しめるよう、今後も進化を続けるコンテンツに注目だ。

篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki

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