【創刊70周年メモリアル座談会 非鉄金属業界の将来展望(2)】〈ものづくり力強化と需要創出〉伊藤氏「人づくりがベース」/浜地氏「アルミの魅力PR」/堀氏「銅の特性高める合金開発」

糟谷敏秀氏(経済産業省製造産業局長)、西田計治氏 (日本鉱業協会前会長、三井金属鉱業社長)、浜地昭男氏(日本アルミニウム協会会長、三菱アルミニウム社長)、伊藤雅彦氏(日本電線工業会会長、フジクラ社長)、堀和雅氏(日本伸銅協会会長、三菱伸銅社長)/司会・一柳朋紀鉄鋼新聞社編集局長

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――国内外での需要創出にとどまらず、海外需要を捕捉する上でも、ものづくり力の強化は欠かせない課題です。例えば技術力やコスト競争力の強化に向け、どのような取り組みを進めていますか。堀会長、伊藤会長、それぞれいかがですか。

堀 ものづくりで重要になるのは『人』づくりです。そこで日本銅学会と連携して学生へのリクルート活動に力を入れています。日本勢は、生産規模は海外勢に劣るのですが、合金開発といった技術力では優位性があります。この競争力を維持するには、人材力の維持・強化が不可欠なので、大学との連携は非常に重要です。

伊藤 やはり、人づくりはものづくりのベースです。最終的に高い付加価値を創り出すためにも『人』は大変重要です。電線工業会としては、関連団体の電線総合技術センターで規格やケーブルの試験方法に加えて基礎的技術の教育も公開で行っており、次世代を担う人材の育成に業界全体で取り組んでいるところです。他にも、安全や環境についての講習会や委員会を開催し、その情報を業界の皆さんに提供しています。

 また、高付加価値化や市場創出への取り組みですが、可能性の一例として電線の劣化を見極める『余寿命診断』技術の開発があります。都心の電力網は1964年の東京五輪に合わせて構築されたものが多く、それらは敷設から60年近くがたっています。いかに品質が素晴らしくても、これだけの年月がたてばケーブルも傷んできます。だが、いつまで使えるかが明確に分からないために、中には健全なものを張り替えるケースもあるでしょう。余寿命診断は、効率的な張り替えを進める上で非常に有効です。診断自体をビジネス化する方法もありますが、診断技術を活用して最適な更新を訴えることで、張り替えという新市場を創出できると期待しています。

――伊藤さんから需要創出の話が出ましたが、アルミ業界はいかがですか。

浜地 アルミはまだ130年程度と歴史の浅い金属です。その点、アルミの魅力を社会にアピールしていく必要があります。あまり知られていませんが、日本で製造される鉄道車両の56%がアルミです。鉄の分野とみられがちですが、実は高強度アルミ材が活用されています。また、電気関係ではコンデンサーの電極やリチウムイオン電池のケースでアルミは不可欠な材料です。協会ではこうした実態を講演会や展示会を通じてアピールしているところです。

 今後の生活スタイルの変化などに合わせ、アルミが今後どのように使われていくかを予測し、ロードマップにまとめる作業にも取り組んでいます。変化のスピードが速いので、ロードマップの更新は1~2年ごととし、その都度、会員に提供しています。先ほどのインフラ分野でのアルミ採用の働き掛けでは、『インフラアルミ化委員会』を立ち上げ、アイデアを集めているところです。

堀 銅は逆に古い金属ですが、我々もアルミ協会さんに倣い、昨年初めてロードマップを作成しました。そこで挙げた有望市場は、次世代移動体、生活支援ロボット、IoT(モノのインターネット化)、水素社会、宇宙・深海の五つです。例えば自動車の軽量化ではアルミ化が進んでいますが、電装化の加速に伴い、車1台当たりに使われる銅の部品は増加しています。軽量化の流れの中で伸銅品はさらに薄く、細くなるはずです。それに対応して強度などの特性を高める合金開発が求められるでしょう。

 銅の抗菌性にも期待しています。米国環境省が殺菌力を認めた初めての金属が銅です。この特性を生かして医療施設などでの利用を日本銅センターと連携してアピールしています。また、水素社会へのアプローチは重要な課題です。現在は他の素材が配管やバルブに利用されていますが、伸銅品は水素に強い特性があるので、業界を挙げてPRしていきたいと考えています。

【国内事業基盤の強化と課題】

西田氏「イコール・フッティング整備を」

――国内事業基盤の強化についてはどう進めていますか。あるいはそこでの課題についてもお聞きしたい。西田会長、いかがですか。

西田 当業界では資源開発から製錬、電子部品や自動車部品などに使われる材料加工、リサイクルなど、上流から下流まで一貫で手掛けている企業が多い。これは海外の同業と比べてもユニークな特徴で、それがある意味の差別化につながっていると思います。そこで国内基盤強化という観点で一例を言うと、リサイクル事業の積極的な展開が挙げられます。リサイクル原料は昨今、『都市鉱山』という言葉で広く知られていますが、従来は製錬所で鉱石を補完するための原料という位置付けでした。近年は、これを積極的に製錬プロセスに投入して銅、亜鉛、鉛に加え、貴金属やレアメタルなど幅広い元素を再資源化したり、海外からもリサイクル原料を輸入したりと、積極的にリサイクル事業を展開しています。また、環境事業として産業廃棄物の無害化処理、最終処分を手掛ける企業もあり、国内でどう生き残っていくかについては各社各様に取り組んでいるのが現状です。

 これまで課題とされてきた海外からリサイクル原料を輸入してくる際の手続き簡素化については、経済産業省の支援もあり、改正に向かっています。この点については改めてお礼を申し上げたい。当業界で扱う非鉄金属は、LME(ロンドン金属取引所)で価格が決まる国際商品のため、規制や電力価格などの競争条件で他国と差があると競争力が低下してしまいます。金属価格の変動はある程度やむを得ないとしても、イコール・フッティング(競争条件の統一)の整備を是非ともお願いしたい。

伊藤氏「〝電線の余寿命診断〟で市場創出」

――電線業界はいかがですか。

伊藤 当業界で言えば大きく三つあると思います。一つは先ほどの余寿命診断などでケーブルの張り替えを計画的に行ってもらうなど新たな市場を開拓して、需要のパイを増やしていくということです。2点目は商慣習の改善についてです。例えば電線を納入する際にLME価格が契約時に取り決めた価格よりも下がっていると、価格の値引きを求められるケースがいまだに見られます。工業会は昨年、商慣習を改善しようとガイドラインを策定して会員企業に働き掛けを行いました。先般、経済産業省が策定した『金属産業取引適正化ガイドライン』でも当工業会が訴えている趣旨を非常に多くくみ取っていただき、その普及活動でも後押ししてもらえているということで非常に心強く感じています。ただ、買い手側だけでなく、売り手側も不当な要求に負けないという意識を持つことが重要であり、双方の意識改革を図ることで業界全体の収益性を維持しなければならないでしょう。

 3点目は国内のものづくり力を生かした展開です。そのためにはコスト競争力の強化が必要ですし、自動化や品質の向上という意味でIoTやAIなどを取り入れた生産ラインを構築していくことにもなるでしょう。その際の情報を共有するなど、業界全体としての取り組みやサポート体制を考えていくことも重要です。

糟谷氏「非鉄金属の可能性を支援」

――各業界の現状や課題ですが、糟谷局長はどのような感想をお持ちですか。政府としての支援策などもありそうです。

糟谷 付加価値を高めていけば、非鉄金属にはまだまだ新たな用途、可能性があると感じました。その意味では各社が進めるさまざまな技術開発に対して、国としてもしっかりとサポートしていきたい。例えば先ほどの水素用の超高強度快削黄銅棒やヘテロナノ構造を活用した超高強度銅合金、また、輸送機器の抜本的な軽量化に資する新構造材料等の研究開発など、素材の優れた特性を引き出すための技術開発課題は多い。官民を挙げて推進していく必要があるでしょう。

 非鉄金属のリサイクルでは、日本企業に十分な処理技術があり、リサイクル原料としての必要性があるにもかかわらず、海外に輸出され、輸出先での不適正な処理によって環境上の問題を引き起こすという事態がありました。また、リサイクル原料を輸入する際には規制面で余計な手間がかかるという問題もありました。一連の課題を踏まえ、バーゼル法の改正案を今国会へ提出したところです。バーゼル法の趣旨にのっとり、海外でそうした環境問題を引き起こさないように担保することで、結果として、有用な資源の国内循環の推進につながるものと考えています。廃鉛蓄電池についてはバーゼル法の改正に先駆けて、輸出先で環境上適切な処理が確保されるよう、省令等を改正し、6月1日から施行します。

 電線の商慣習の問題については、金属産業取引適正化ガイドラインを活用していただきながら、政府としても引き続き商慣習の適正化に取り組んでいこうと考えています。これについては国交省と連携して、電設工事事業者をはじめとする関係業界にも要請を行いました。LME価格の変動を理由とした値引き要求や、契約時に合意がなかった特別な配送を追加の対価支払いなしで求めることなどは、独禁法の優越的地位の乱用に当たる恐れがあるということを明確に示していきます。また、電線では未使用で、性能的に問題がない製品であっても製造年が納入年よりも前であると返品や再納入を求められるという問題もあり、これに対しても未使用品であれば製造年を問わず新品として納入できるということを周知していきます。

 海外との競争という面で言えば、米国が中国のアルミ産業に対する補助金政策を問題としてWTOに紛争解決手続き上の要請をしています。日本も第三国参加要請し、国際的な競争条件を公正なものにしていくための取り組みを進めていきます。海外需要の取り込みについては、先ほどもお話があった通り、アジア、新興国を中心に海外需要はまだまだ伸びると思います。政府としては、そうした成長市場におけるインフラ整備の市場調査を行うなどして、日本からのインフラ輸出の促進を支援していく考えです。

――多岐にわたる政府の支援が各業界の競争力強化につながっていくものと期待しています。