【創刊70周年メモリアル座談会 非鉄金属業界の将来展望(3)】〈グローバル化への対応〉伊藤氏「海外生産拡大をサポート」/浜地氏「中国など海外動向の情報収集」

糟谷敏秀氏(経済産業省製造産業局長)、西田計治氏(日本鉱業協会前会長、三井金属鉱業社長)、浜地昭男氏(日本アルミニウム協会会長、三菱アルミニウム社長)、伊藤雅彦氏(日本電線工業会会長、フジクラ社長)、堀和雅氏(日本伸銅協会会長、三菱伸銅社長)/司会・一柳朋紀鉄鋼新聞社編集局長

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――成長市場である海外の需要をどう獲得していくかも非鉄金属業界にとって重要なテーマです。グローバル化への対応について現状の取り組みや課題など、伊藤会長にお伺いします。

伊藤氏

伊藤 インフラ輸出というのは当業界にとっても非常に興味深いテーマです。工業会の会員のうち、4分の1程度の企業がすでに海外展開していますが、それ以外の企業は国内生産に特化しています。そうした企業がこれから海外に工場を新設するとなると負担も重いですし、今ある構えでどういった海外貢献ができるかを考えると、その一つがインフラ輸出という形になると思います。一方で、海外での生産を拡大させることも重要だと認識しています。15年から会員企業全体の海外での生産出荷状況をとりまとめ、情報を発信しています。各社の海外展開の状況を共有化し、海外事業を進める上での判断材料にしてもらえればと考えています。会員企業の海外生産量は電力や自動車向けを中心に40万トンを超え、すでに国内生産に匹敵する量となっていますが、さらに拡大できるようにサポートしていきたい。

 海外ではIECという電線の国際規格があり、これが場合によっては日本企業に不利になるケースがあります。この点については規格の改定や新設などに際して当工業会として意見を言えるようなポジションが必要です。すでに環境配慮最適導体サイズ設計や超電導ケーブルの試験方法など成果が出ている分野もあるので、そうした活動を継続して工業会のプレゼンスを高めていきたい。それには海外の業界団体との関係強化などを通じ、国際規格の枠組み作りに積極参画することが重要だと考えています。

――浜地会長、アルミ業界はいかがでしょうか。

濱地氏

浜地 最近では自動車のパネル材を中心に各企業が積極的に海外展開しています。一方、協会としての取り組みの一つは海外の動向についての調査です。現在、アルミ業界では中国企業が一つの脅威となっています。特に04~05年ごろから中国企業が最新鋭の大型設備を導入して生産能力を大幅に増やし、それが足元で供給過剰となって世界の貿易をゆがめていると指摘されています。これは米国やカナダといった国が問題視しており、日本としてもそういった影響の有無を経産省と共同で調査・把握しようとしています。他方、中国は魅力ある市場でもあるので市場動向の情報収集も行っています。さらに今後は中国以外の地域に進出する企業も増えると思いますので、各国の需要トレンドなどを詳細に調査していく必要があるでしょう。

 米国ではフォードのピックアップトラック『F150』というオールアルミ車が登場しましたが、これは自動車アルミ化の加速という点で非常にインパクトがあるトピックです。それと最近は世界的にESG(環境・社会・ガバナンス)の観点で企業が評価されるようになっていますが、当業界でも欧米企業を中心にバリューチェーン全体におけるサステナビリティーを評価する『アルミニウム・スチュワードシップ・イニシアチブ』という動きがあります。そういった世界的な動きに、日本企業が今後どう対応していくべきなのかを判断するための情報なども提供していくつもりです。

――中国の能力過剰問題ですが、世界の需給に影響が出ているということでしょうか。

浜地 需給への影響もありますが、最大の問題は中国の補助金政策です。安価に生産された地金が大量に輸出され、その影響で米国の製錬所が閉鎖に追い込まれるケースも出ています。日本企業は製錬を行っていないので地金に関する影響はあまりないのですが、中国の余剰能力で生産された製品が東南アジアに安価で輸出され、市場価格を押し下げているという点で影響を受けつつあります。日本としてもしっかり監視し、必要ならば警鐘を鳴らしていきたいと考えています。

【原料安定確保と資源ナショナリズム】

西田氏「リスクマネー確保が課題」

――次は原料の安定確保についてお聞きしたいと思います。資源ナショナリズムの話も出ましたが、西田会長に資源を取り巻く環境についてお伺いします。

西田 銅を一例として言えば、最近は標高が4千メートルを超えるような鉱山など厳しい条件下での開発案件が増えており、これに伴って投資額も大きくなる傾向があります。開発そのものが難しくなり、案件自体が限られてきているということがまずあります。一方、価格面では金融資金の流入などで、従来よりも価格の変動幅が非常に大きくなっています。開発条件の悪化と価格の高ボラティリティ化という環境の中で、どのように資源を安定確保していくかが課題ではないでしょうか。また、価格低迷時には企業自体の収益が圧迫されますし、投資意欲も減退する。ただ、これは鉱山ビジネスの特質と言えますが、価格低迷時は優良案件を買収する好機ともなります。そのときに資源確保のためのリスクマネーをどう確保していくかが課題となります。これについては国の支援をお願いしているところです。

 資源ナショナリズムについて言えば、インドネシアで未加工鉱石の輸出を禁止し、自国で付加価値を高めるという動きがありますが、こういった動きが広がる懸念は強い。インドネシア政府とは経産省にさまざまな機会を通じて交渉していただいているので、我々としてはその動向を注視しているところです。

糟谷氏「官民一体で相手国と交渉」

――資源について糟谷局長はどんな問題意識をお持ちですか。

糟谷 資源の大半を輸入に依存する日本にとって、資源の安定供給確保は非常に大きい課題です。政府には、減耗控除税制をはじめとするさまざまな支援策でリスクの平準化を図り、日本企業の海外進出をサポートする取り組みが求められていると思います。また、相手国政府との交渉が必要な問題が発生した場合には官民一体となった対応が必要ですし、資源政策については製造産業局、資源エネルギー庁、通商政策局が連携して取り組む必要があると考えています。

――引き続き糟谷局長にお聞きしたいのは、政府が成長戦略の柱として取り組んでいる『第4次産業革命』についてです。まずはその概要をお伺いします。

糟谷 第4次産業革命ではビッグデータを分析し、さまざまな価値を引き出す、あるいはAIやロボットを活用することなどで新たなビジネスモデルの創出や、今までできなかったことができるようになると言われています。その背景にはビッグデータの取得・活用が容易になってきたことや、コンピューターの処理能力の向上などさまざまな技術の進展があります。経産省が製造企業を対象に毎年実施しているアンケートでも『生産現場のデータをとっている』という企業が昨年末には1年前に比べて3割近く増えた。他方で『そのデータを有効に活用できているか』という問いには『活用したいが、これから』という回答が多かった。そういう意味では、この1年間でデータをビジネスに活用しようという機運は着実に高まっていると感じています。問題はこれをどう活用するかです。まずはデータをとることから始めることも重要だが、生産の効率化やビジネスモデルの創出に向けて、このデータにはこんな使い道があるのではないか、といった仮説を立てて取り組んでもらうことが必要ではないでしょうか。

 また、第4次産業革命ではドイツが『インダストリー4・0』、フランスが『未来の産業』、中国が『製造2025』といった旗を立てていますが、日本はこうした旗印を立てずに政策を進めてきました。先日の安倍総理と世耕経産相の訪独の際に、第4次産業革命を通じて日本の産業が目指す姿として『コネクティッド・インダストリーズ』というコンセプトを打ち出しました。この意味するところは、さまざまなつながりによって新たな付加価値を創出することができる産業社会ということです。モノとモノがつながるというのはIoTですし、人と機械、システムがつながることは新たな付加価値の創出につながります。さらに人と人が世代を超えてつながれば、技術や知恵が伝承される。こういったさまざまなつながりで付加価値を生み出そう、そしてそれを通じて新たな経済社会『ソサイエティー5・0』を実現しようという考え方です。

 この取り組みは人抜きでは語れません。私も人の力を生かすということが日本企業の勝ち筋だと思っていて、このコネクティッド・インダストリーズでも日本の強みである技術力、現場力を生かした産業社会を構築したい。つまり、現場を熟知する知見に裏付けられた課題解決や『カイゼン活動』が生かせる人間本位の産業社会を創ろうというコンセプトであり、日本企業の多くがその方向に向かって取り組みを進めていると理解しています。