若き才能続々 「2種登録」生かすJクラブ

 Jリーグの下部組織に所属しながら、トップチームの公式戦に出場できる「2種登録」選手がピッチ上をにぎわせている。プロ契約への近道とされ、各クラブも若手に実戦経験を積ませようと積極的に制度を活用。過去5年間で倍以上の勢いで増えており、今季のJ1横浜Mも既にユース3選手が名を連ねている。

 12日にニッパツ三ツ沢球技場で行われたYBCルヴァン・カップ。試合後の取材エリアに高校の制服姿で現れた横浜MのMF山田康太(17)=上矢部高3年=は「プロの世界のスピードに慣れる前に終わったのが悔しい」。出場14分間の黒星デビューに、喜びも控えめだった。

 1月にトップチームのタイ遠征に帯同して見いだされ、同期のMF堀研太(18)や1学年下のMF椿直起(16)とともに3月中に登録。ユースの活動と学業に折り合いをつけながら週2回程度、トップチームの練習に参加する。

 「プレーの質や止める蹴るの技術、常に試合を想定した練習は勉強になる」と山田。この年代の選手には昇格へのステップとされ、「上手な人、プロに近い人が(2種登録に)なるイメージを持っていた」という夢への最短距離を歩む。

 Jリーグによると、2016年に2種登録されたユース選手は計113人。12年の53人から2・13倍に急増。担当者は「U−23(23歳以下)チームのJ3参戦が大きな要因」と話す。

 16年からJ1、J2のクラブが2チーム目を編成できるようになり、今季もFC東京、G大阪、C大阪がJ3に登録。15日には久保建英(FC東京U−23)が15歳10カ月11日でゴールを挙げてリーグ最年少記録を更新。5月初旬にもトップチームで公式戦デビューする見通しだ。

 また、今季からルヴァン・カップでは21歳以下の選手を1人以上先発させることを義務付けた。横浜Mは昨季から全メンバーの出場機会を確保しチーム力を底上げするため、同カップではリーグ戦からメンバーを大幅に入れ替えて戦う。松橋力蔵ヘッドコーチ(48)は「若い世代に実戦経験を積ませることは、日本サッカー界全体の流れ」と話す。

 「ポテンシャルの高い選手はトップでどんどんやるべき」。送り出す側の横浜Mユース・西谷冬樹監督(47)も全面的に理解を示し、「高校を卒業してからプロになるのではなく、ユース在籍中に契約できるように、という話をしている」と背中を押す。

 ただ、フィジカル面で差のあるプロ選手と同じ練習メニューをこなせば、けがなどの心配もある。西谷監督はトップチームの練習にも立ち会って各選手の体調を把握するなど、きめ細かな配慮も欠かさない。

 現時点で山田らの昇格は確約されておらず、松橋ヘッドコーチは「上で刺激を受けて、ユースに戻ったときに違いを見せられるかが大事」とも。10代後半の選手には、ファンの温かい声援とともに、厳しいプロの目が注がれている。

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