分娩“空白”区が解消 横浜市内全18区で分娩可能に

 産科医不足で2014年8月から出産の受け入れを休止していた横浜市泉区の国際親善総合病院(287床、安藤暢敏院長)が常勤の産科医を新たに3人確保し、今月から分娩(ぶんべん)を再開した。対応可能な件数は月15件程度と以前より少ないが、同区内でお産できる医療機関のない状態が解消し、市内全18区で分娩が可能となった。医療関係者からは今後の産科医療の充実に期待が寄せられている。

 同病院は泉区で唯一の総合病院。10年以上前には年間千件前後、休止前も同700件程度の分娩を行っていた。ところが14年春に産婦人科の常勤医が相次いで他の医療機関に移るなどした後、非常勤医も確保できなくなったため、分娩の休止を余儀なくされていた。

 この間、医学部を持つ県内の大学などに医師の派遣を求めてきたがかなわず、医師らの個人的な人脈も活用した地道な採用活動を継続。その成果が実り、県内の医療機関で勤務歴のある3人を常勤医として順次確保した。

 昨春、産婦人科部長に就いた多田聖郎医師はその一人で、泉区内の“空白”を埋める役割を担おうと横浜市立みなと赤十字病院(中区)から移った。「かつて『分娩難民』と言われるような時期もあったが、お産の場は地域ごとに顔の見える形で提供していくことが重要」と再開の意義を強調する。

 再開後初の分娩は今月半ばに行われ、5月から本格的に実施する。当面は対応できる件数が限られ、分娩予約は11月まで埋まっているものの、安藤院長は「再開に際しては安全を第一に考えた。段階的に態勢を充実させたい」と説明する。新生児医療などで連携が欠かせない小児科の態勢も強化したほか、設備の更新などを通じて医療環境の充実にも努めており、今後はニーズの高まっている無痛分娩にも力を入れていく方針だ。

 同病院はもともと、検診と分娩の役割を地域の診療所と分担する「セミオープン」という仕組みの中核施設だった。同システムに以前から協力してきた小関産婦人科医院(旭区)の小関聡院長は「休止期間中は別の病院を紹介するしかなかった。再開により、通院などの負担が軽減される人が増えるのではないか」と歓迎している。

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